5月に入り、学生たちはようやく学校に慣れてきたころでしょうか。今回は「留学」のお話です。ただし、海外留学ではありません。皆さんは「地域みらい留学」ってご存じですか?
これは「都道府県の枠を超えて、地域の公立高校に留学(進学)し、親元を離れて3年間過ごす」制度。実は今、新たな選択肢が生まれています。背景には、都市部の余裕のない教育環境や人間関係などに疑問を持つ子育て世代が一定数出ていることが考えられます。若年世代の移住希望者が増加している最近の傾向にも重なる話ですよね。
3年前、東京で開かれた「地域みらい留学」の合同説明会に参加しました。1000人超の親子が会場に押し寄せ、その熱気に圧倒されました。当時は全国で約50校、3年後の今年は約100校が名乗りを上げ、年々増加しています。募集学科やコースも様々で、「みらい共創」「地域創造」「キャリア探求」「森林環境」…、大学と見まがうコースがたくさんです。
でもなぜ地方? それは、少人数教育や環境の視点だけでなく、今の教育に求められる「課題解決型の学び(探究)」が、課題の多い地域だからこそリアルな学びとして可能なのです。
県内で唯一エントリーするのが串本古座高校です。存続の危機、統合を経て、高校魅力化に挑戦し、現在、普通科の「グローカルコース」で全国から人材が集まっています。紀南の自然や文化などの体験を通して地域を学び、スキューバダイビングやカヌー実習もあるんですよ。さらに2年後、「宇宙探究コース」を新設予定で、県外からの進学者が増えることでしょう。
私が勤務する和歌山大学にもこの経験者が3人います。それぞれ沖縄と島根で高校生活を送り、地域連携活動に熱心な観光学部に進学したとのこと。「留学が地域に興味を持つきっかけになった」と話してくれました。
少子高齢化が進み、県内でも県立高校の存廃議論が始まっています。地元の子たちが通いたいと思う魅力的な学校になるのはもちろん、他県から選ばれる学校に変身することが、存続の先にある地域活性化への一つの道筋になるでしょう。こうした高校が1校でも増えれば、和歌山での起業・就業や将来世代のU、Iターンにつながるはず。皆さんはどう思いますか?
和歌山大学・地域連携専門職員 増山雄大(第1土曜担当)
(ニュース和歌山/2022年5月7日更新)