目の前に広がる紀淡海峡で獲れた海の幸が人気の休暇村紀州加太。夕食やランチに負けず劣らず近年、注目を集めているのが朝食です。オープンキッチンの一角に立ち、おにぎりを握ってもてなすのは、なんと総支配人の義本英也さん(63)。訪れた人の思い出づくりに情熱を燃やします。

おにぎりの具130種

──朝食が人気です。

 「コロナ禍を機に、宿泊しなくても朝食を予約で利用いただけるようにしました。ホテルの朝食はビュッフェが多い中、朝懐石を提供しています。注文が入ってから作るライブキッチンを設け、焼きたてワッフルや本格ドリップコーヒーを出しています。私はその一角でおにぎりを握っており、皆さんから『おにぎり親父』と呼ばれています(笑)」

──なぜおにぎりを?

 「昔、仕事終わりに行ったおにぎり専門店で、好みの具を目の前で握ってくれるスタイルに衝撃を受けました。とてもおいしく、自分もやりたいと20年ほど前、休暇村雲仙に勤めていた時、始めました。当時の具は梅、こんぶなど3、4種類でしたが、現在は130種類を提供します」

──どんな具材を?

 「定番は30種あり、南高梅や金山寺味噌、甘辛く味付けたしょうが、釜揚げしらすなど和歌山の特産品を使ったもののほか、地養鶏卵黄漬けやチーズが人気です。さらにスペシャルメニューの熊野牛ローストビーフや激辛キーマカレー…。好みは人の数だけありますので、お客様の喜ぶ顔を想像しながら新しい具や、その組み合わせを考えるのが楽しいです」

──こだわりは?

 「いろんな味を試していただけるよう、小さめに握ります。3個で茶碗1杯くらいの量。ごま油を少し加えた米を、『おいしくなーれ』と願いながら、ぎゅっぎゅっぎゅっと3回握って形を整えます。中の米をふんわり仕上げるのが腕の見せどころ。多い時は1日400~450個作ります」

──他におすすめは?

 「カレーも好評です。和歌山らしく、じゃばらの皮と果汁を入れ、さっぱりした酸味が特徴です。最近は漬物にも凝っていて、野菜の皮を使ったものを含め10種類以上。作り方を聞かれるほど喜ばれています」

思い出づくりに

──出身は?

 「大阪です。新幹線で車内販売の調理と接客を担当した後、北海道のホテルへ転職。休暇村に入ってからは、加太を皮切りに、兵庫や長崎、広島などを経て11年前、加太に戻り、総支配人をしています」

──心掛けていることは何ですか?

 「思い出づくりです。北海道を旅行した際、車内販売の人たちとの楽しい会話が記憶に残り、『自分もお客様の思い出づくりに携われる』と気づきました。それ以来、どうすれば喜んでもらえるか、記憶に残るかを考えています。朝食のおにぎりもその一つです。3年前の夏、南海加太さかな線を盛り上げるため、休暇村紀州加太のシェフが作った鯛コロッケと鯛コロッケバーガーを、私が車内で販売しました」

加太朝懐石

──今後は?

 「朝食はリピーターが多く、『ごちそうさま、仕事に行ってくるわ』と声をかけてくれるビジネスマンも。朝食を通じ、皆さんの一日に彩りを添えられれば。個人的にはおにぎり道を極めたいですね」

 

【休暇村紀州加太】
和歌山市深山483    
☎073・459・0321
朝食7:00~9:30
昼食11:30~14:00
夕食17:30~20:30
※いずれも要予約

(ニュース和歌山/2022年5月28日更新)