和歌山市は昔のように企業城下町と言えなくなりましたが、先日、有田市でも同市の製造品出荷額の9割を占める企業閉鎖のニュースがありました。時代の大きな転換点で、企業は単純な維持が望めない中、どう生き抜けばいいか、難しい状況です。

 そこで、今年度から県企業振興課が「デザイン経営」による企業支援を打ち出しました。デザイン経営とは、製品の外見を変えるだけの表層的なデザインではなく、本質的なビジョンやコンセプトによるブランド構築、新事業推進にデザインの力を活用する経営手法のこと。技術だけでは差別化が難しくなった「企業(事業・商品・サービス)価値の向上」を目指す取り組みです。

 県が主催し、7月1日㊎に「デザイン経営シンポジウム VALUE」がアバロームで行われます(オンラインも)。対象は経営者、事業企画者、デザイナーら新たな企業価値づくりを目指す人や、まちづくりに取り組む人、土木を含む行政担当者、学生など、県内の事業に危機感を持たれている方です。

 当日は、創業300年を超える奈良県の老舗企業でデザイン経営を実践されている中川政七商店や、和歌山県内の経営者が話をされます。衰退時代で持続可能性を高めている企業は、経営者の自覚の有無にかかわらず、デザイン経営に近いことを取り入れており、経済産業省のHPにも様々な業種の事例が載っています。

 また、県は「和歌山イノベーションベース」という事業にも取り組んでいます。これは、より大きな事業成長を目標とした意識の高い経営者に集まってもらい、議論や相互サポートによる成長を促し、和歌山で経営者が経営者(起業家)を生み、育てる、前向きに切磋琢磨できる経営者のためのコミュニティを目指しています。両事業とも、周りに該当者がいれば、ぜひご紹介いただければと思います。

 人口減少下で、どんな業種であっても、あらゆることを考え抜き、失敗しながらも前向きにチャレンジし続けていくことが、持続可能な会社経営につながると思います。次世代の子どもたちが「和歌山の○○で働きたい」と言ってくれる会社がいくつもでき、若い世代の働く選択肢が増え、「若者が戻りたいまち」になればと思っています。

WEBメディア「ワカヤマデイズ」運営 武田 健太(毎月第3土曜担当)

(ニュース和歌山/2022年6月18日更新)