失明男性と和大附小児童がモデル

 進行性の難病、網膜色素変性症で失明した和歌山市の職員、山﨑浩敬さんと、そのバス通勤を10年以上手伝う和歌山大学附属小学校の児童を主人公にした絵本『バスが来ましたよ』が27日㊊、アリス館から発行される。山﨑さんは「この出会いを多くの人に伝えたいとコンクールに応募した私の作文が元になりました。困っている人に勇気を持って声をかける人が増えれば」と話す。

 失明した山﨑さんが不安を感じながらバス通勤していたある日、「階段はここだよ」と女の子の声がし、背中に小さな手が触れた。以来、乗り降りの介助は続き、その子が卒業した後は後輩、さらに別の後輩へ。だれに教わるでもなく10年以上、子どもたちの間で親切は受け継がれている。それは女の子の一声から始まった、優しさのバトン──。

 この話を知った作家の由美村嬉々さんが絵本化を熱望。和歌山で取材を重ね、完成させた。

 20日には絵を担当した松本春野さんらが同校を訪れ、絵本と原画の複製を贈呈した。この後、現在サポートする6年の河島香音さんと4年の西前友雅(ゆい)さんが朗読した。二人は「目の不自由な人はたくさんいて、お手伝いするのは特別ではなく当たり前のことだと、いろんな人に知ってほしい」と声を弾ませた。

 AB判、40㌻。1540円。和歌山県内主要書店で販売。7月3日㊐午前11時と午後2時、同市松江のツタヤウェイガーデンパーク和歌山店で、由美村さんのトークイベントとサイン会。無料。

(ニュース和歌山/2022年6月25日更新)