桃のシーズンがやって来ました。「あら川の桃」で知られる産地、紀の川市桃山町のメゾン フルリールは、季節のフルーツを使ったパンが人気のベーカリーカフェです。オーナーの西俊英さん(46)は、両親が栽培する桃をはじめ、地元農家が大切に育てた新鮮な食材と、10種類の小麦粉を使い分けたこだわりパンを提供しています。

桃のデニッシュ

──どんなパンを?

 「ソフトやハードなど約30種類あります。一番人気は、季節の果物が乗ったデニッシュ。イチゴや桃、ブルーベリー、イチジク、柿といった和歌山産の採れたてジューシーなフルーツを、バターたっぷりでサクサクの生地に合わせます。素材本来の味を楽しめるよう、フルーツはほとんど味付けしていません。今は桃のデニッシュ目的のお客様が多く、実家の両親が育てたものを使っています。1日に作れる数は30~50個と限られているため、すぐに売り切れます」

──こだわりは?

 「和歌山の食材を使っていることです。例えば金山寺みそ。若い世代に知ってもらいたいと、生地に練り込んだハード系パンを考案しました。『みその味がおいしい』と高齢の人からも好評です。じゃばらを用いた発酵焼き菓子、クグロフも喜ばれています。和歌山で栽培されている貴重なかんきつだと知ってもらえるよう、香りの良い皮部分を加工したピールを飾っています。生地は食材や作りたい食感に合わせ、10種類の小麦粉を使い分けています。前日に仕込んで長時間発酵させることで、小麦粉のうま味や香りを引き立たせます」

──ランチが人気です。

 「肉、魚、パスタから選べるメーン、前菜、デザートとドリンクに、パンの食べ放題が付いていす。隠し味に生クリームを入れ、耳までやわらかい食パンはじめ、菓子パンやハード系パンなど8~10種類を提供しています。女性でもおかわりする人が多いんですよ」

 

和歌山ならでは

──出身は?

 「桃山町です。実家は農家で、子どものころは夏休みになると桃の収穫を手伝いました。食べることとものづくりが好きで、工学部を卒業後、和歌山の会社でプログラムや精密機械加工に携わりましたが、もの足りなさを感じていた時、東京へ。パンが好きだったこともあり、自分がおいしいと思った店やベーカリーレストラン3店舗で修業しました。朝から夜まで働き、休日はパンやケーキを食べ歩く日々を過ごしました。29歳で地元へ戻り、パン店を始め、その5年後にカフェスペースを設けました。農業をしながら、毎日朝から掃除や配達を手伝ってくれる両親に感謝しています」

──今後は?

 「東京ではお金を出せばいろんな果物を買えますが、新鮮さでは和歌山にかないません。Uターン後、その種類の多さに驚き、地元にいると当たり前になっている魅力があると気づきました。他の人も良さをもっと知れば楽しくなるはずと、30代のころ、手作りパン店を集めたイベントを開催。3000人が訪れる大盛況で、少しは地元に貢献できたかなと思います。今は新メニューを考えるのが楽しく、イメージ通りの味ができた時は達成感があります。これからも和歌山ならではのパンを作っていきます」

【メゾン フルリール】
紀の川市桃山町市場309-2
☎0736・66・3233
パン販売8:00~18:00
ランチは2部制
11:30~13:00
13:15~14:30
カフェ11:30~16:30
㊊㊋休み(祝日の場合は営業)

(ニュース和歌山/2022年6月25日更新)