ノーサインで結果残す 〜 野球界発展につなげたい
近畿学生野球連盟リーグ戦でこの春、4度目の優勝を果たした和歌山大学。攻撃時に監督が一切サインを出さず、選手が主体的に考え、共通認識を持って組織的に動く「ノーサイン野球」が実を結んできた。大原弘監督は「理想は、全員が同じ野球観で動けること」ときっぱり。さらに、自分たちの野球を高校生にも伝え、その奥深さを感じてもらいたいと願う。
和大がサインをやめたのは、2015年秋。大原監督が「野球は〝間(ま)〟のあるスポーツ。サインで生じる〝間〟を無くせないか」と考えたのがスタートだ。
例えば、ノーアウト1塁だと、戦法は主にバント、盗塁、ヒットエンドラン。だが、サインが出るタイミングと、ランナーやバッターの思いがズレることがある。
一方、ノーサインでは、ランナーが主導。ピッチャーのボールから目を切らず、スキがあれば走る。バッターはランナーの動きを見て、スタートが良ければ打たずに盗塁させ、悪ければバントやゴロを打ってサポートする。選手の一瞬一瞬の判断に委ねるのだ。
だが、これをするには、ランナーとバッターに共通認識が必要。練習時から疑問に思うプレーがあれば、全員がすぐ集まり、意図の確認を繰り返す。「なぜ走ったか」「なぜバントか」。意見を出し合い、全員が考え、共有する。時にはミーティングの方が長いことも。選手をまとめる金谷温宜(はるき)主将は「予測し、作戦を立て試合に臨むと、次はバントとかエンドランとか、みんなが分かってきます。判断力、決断力、断行力の『三断力』を高め、先に仕掛ければ、主導権を握れます」。それが4度の優勝として表れた。
ノーサイン野球の意図は、地元高校生との合同練習で共にプレーしながら伝えている。金谷主将は「飛び抜けた選手がいなくても勝てるなど、野球の楽しさや、戦う姿勢を感じてほしい」と思いを話す。
また、高校野球和歌山大会では、和大生がボールボーイやグラウンド整備などを手伝う。高校からボールを提供されたことがあり、お返しにと考えた取り組みだ。
「大学と地域の連携で、和歌山の野球界発展につなげる」。その思いが、形になりつつある。
(ニュース和歌山/2022年7月9日更新)