◆消化器外科・大腸肛門外科
大腸肛門病専門医 日本外科学会専門医
福外科病院 福 昭人院長
A. おそらく「脱腸(そけいヘルニア)」と呼ばれる、良性の疾患でしょう。成人は、小児の先天性ヘルニアと違い、自然治癒することはありません。加齢とともに下腹部から足の付け根(そけい部)の筋肉組織が弱くなり、その部分からお腹を覆う腹膜が袋状に飛び出てくることで起こります。
薬で治すことはできず、治療は手術となります。放置しておくと腫れが急に硬く痛くなり、指で押さえても戻らなければ緊急手術になります。早期のうちに外科を受診して下さい。
手術は、腫れている部分を切開し、飛び出ている腹膜の根元を縫合し、開いた筋肉をポリプロリン製のメッシュ(医療用の布)で傷に緊張がかからないよう補強します。ただ、40歳までの発症なら補強しなくても完治することが多いです。
現在は、日帰り手術が原則ですが、①中等度以上の肥満の方②陰のうまで腫れている方 ③痛みに強くない方 ④抗凝固剤を内服している方 ⑤高齢で一人暮らしの方などは、2日間入院(手術翌日退院)が望ましいことがあります。なかでも高齢者は、基礎疾患があることが多く、かかりつけ医と連携を取りながら、手術前に全身状態を診る必要があります。外科専門医にご相談ください。
(ニュース和歌山2015年5月23日号掲載)