1969年に1作目が公開され、今も愛される映画『男はつらいよ』の主人公、寅さんと、監督の山田洋次さんに魅了された「わかやま寅さん会」の西本三平代表(74)。11月19日㊏、和歌山市で3度目の上映会を実施します。「作中の柴又のように、和歌山も人とのつながりを大事にし、活気づいてほしい」と願っています。
山田監督への手紙
──山田洋次監督との出会いは?
「高校の教員をしていた1984年、講演会の企画を任されました。候補に挙がった山田監督の話を京都で聞けると知り、足を運びました。そこで北海道の、とある家族の話をされました。成績が悪い友達の順位を上げるため、自分の順位を下げようと勉強をしなくなった息子に、父親が『それだけ友達のことを思えるのはえらい』と褒めたたえた…。華やかな映画界にいながらも、身近な話題に目を向ける人柄にほれ込み、手紙を書いて、86年に和歌山へお招きしました」
──その後は?
「以降も2度、忙しい時間を割いて講演してもらいました。恩返しにと、2013年に公開された監督50周年記念の映画『東京家族』のチケット1000枚を手売りしました。これが『わかやま寅さん会』の始まりです。その後、19年と21年に、当時の新作映画先行上映会を開催し、監督が舞台あいさつをしてくださいました」
──寅さんの魅力は?
「葛飾区柴又の町を舞台に描き続けるこの作品は、物語の中に生きる人たちの日常を映した『柴又通信』のようなもの。いつもトラブルの中心にいる寅さんが、自分なりの言葉や行動で周りの人がハッとするような答えを導いていく姿にしびれます。以前の上映会時、来てくれた高校生から『寅さんみたいなおじさんになりたい』『あんな人が周りにいたら楽しそう』との声が聞かれました。今の若者が見ても魅力的な人物なんだと実感しました」
奮い立たせる力
──今年も和歌山で上映会を開くそうですね。
「山田監督の作品で87年公開、和歌山市が登場する『男はつらいよ 寅次郎物語』と、80年の作品で高倉健さん主演の『遙かなる山の呼び声』の2本です。上映後は、俳優の倍賞千恵子さんと北山雅康さんによるトークショーを行います。倍賞さんは長年、寅次郎の妹、さくらを演じ、『遙かなる~』ではヒロインの風見民子役を務めました。北山さんは88年以降、全ての山田監督作品に出演しています」
──今後の目標は?
「何年かかるか分かりませんが、50作ある『男はつらいよ』全作品を上映したい。そこに出演者やスタッフに来てもらい、撮影時の話や当時の社会について語り合う『寅さんサミット』のようなイベントを目指します。映画で世の中が変わるとは思わないですが、人の気持ちを奮い立たせる力はある。寅さんが持つ、周囲の人を巻き込む勢いが、映画を見た人に影響を与え、和歌山を盛り上げるきっかけになればうれしいです」
映画まつり~いま、幸せかい?
11月19日㊏、和歌山市松江のジストシネマ和歌山。午前10時40分から『遙かなる山の呼び声』、午後2時20分から『男はつらいよ 寅次郎物語』。ちんどん通信社によるちんどんパフォーマンスも。各2800円。チケットは西高松の太田書店、万町の本屋プラグで販売。西本さん(090・6972・7976)。
(ニュース和歌山/2022年10月29日更新)