便座は暖房・温水洗浄付き 災害時の高齢者利用も想定
「汚い」「臭い」「暗い」とのイメージが強かった学校のトイレが近年、変わっている。生活スタイルの変化を受け、個室の便器は和式から洋式へ。災害後、避難所となるのを見据え、高齢者や障害者が使いやすいバリアフリートイレの整備も進む。
個室は全て暖房付き便座と温水洗浄機を備えた洋式便器。手洗い場の蛇口は手をかざすと流れ出すセンサー式とし、感染症対策に配慮した。加えて、車いすや人工肛門・人工ぼうこうの人でも使いやすいバリアフリートイレも。和歌山市楠本の川永小学校のトイレは3年前の改修で、従来の和式から生まれ変わった。
公立小中学校のトイレは昭和40~50年代の校舎建設時に設けられたものが多い。和式が主流で、水を流して清掃するタイル張りの床が一般的だった。しかし設備の老朽化に加え、家庭や公共施設で洋式トイレが普及し、児童が慣れない和式便器の使用を控えることが問題となっている。
文部科学省によると、県内公立小中学校の洋式便器率は2020年が46・9%。4年前から15%上がったものの、全国平均の57・0%を下回る。
16年の調査で26・4%だった和歌山市は翌年、洋式化をスタートした。昨年3月時点で64・1%、さらに26年度に90%を目指す。市教委教育施設課は「以前は他人の座った洋式便器を使えない児童が多かったが、生活様式が変化しました。『明るく清潔で安心して利用できるトイレ』が求められています」と考える。
内開き扉の場合、便器上部に空間のある和式に比べ、洋式はスペースの確保が課題となる。川永小学校は廊下の一部をトイレとし、スペースを確保した。沖平渉校長は「和式の時より個室は減ったが、困ったとの声は聞かない。暗いイメージから、安心・快適な場所へと意識が変わり、児童はじめ保護者、各種活動で使う地域の人にも好評です」。
岩出市と紀美野町も洋式化。一方、海南市と紀の川市は各階に洋式1ヵ所以上を基準に、和式を残しながら改修した。海南市教委総務課は「児童は『洋式が増えてうれしい』と喜んでいるが、地域には和式だけの家もあるため、困らないようにとの意見もある。様子を見ながら、今後の改修を考えたい」と話す。
学校は地域活動や、災害時の避難所にもなる。高齢者や障害者らの利用を想定し、文科省は25年度末までに、避難所に指定されているすべての学校でバリアフリートイレを整備するとしている。多目的トイレがある学校の割合を見ると、昨年の調査で和歌山県は84・3%と全国7位。和歌山市教委教育施設課は「学校によっては災害時にマンホールへ取り付ける仮設トイレがあるものの、災害の規模が大きい時は校舎も開放します。だれもが安心して使えるトイレは大切」と考える。
全国のトイレ関連企業でつくる「学校のトイレ研究会」の河村浩主席研究員は「洋式やバリアフリートイレは災害時に地域の役に立つ。10、20年後を見据え、あらゆる人へ対応した環境づくりを」と望んでいる。
(ニュース和歌山/2023年1月14日更新)