のどかな畑の中に設置された2台のキャンピングトレーラー。昨年11月、紀の川市古和田に開店したバードコール・フィールドは青果店とカフェが一つになったお店です。オーナーで、農業を営む松原好佑さん(33)は「フルーツたっぷりのタルトと一緒に、今夜のおかず用に地元の野菜はいかが」と笑顔を見せます。
主役は果物
──農業をしているそうですね。
「紀の川市で120年続く農園の6代目です。柿と玉ねぎをメーンに、かんきつ類やとうもろこしを育てています」
──なぜ店を開こうと?
「育てては収穫し、箱詰め、農協へ運ぶ…。この作業の中で、消費者の声を聞く機会がなく、これでいいのかと自問自答していました。そんな中、大阪で毎週開催されているマルシェで、5年前からうちの農産物を販売するようになりました。対面で買ってもらうことで、『こんなにおいしい果物食べたことない』『子どもがまつばら農園のみかんしか食べなくなった』との言葉をいただき感激しました。お客さんと顔を合わせ、自慢の品を直接買ってもらう。これが農業のあるべき姿であり、やりがいだと感じ、実行できる場所を開店しました」
──どうしてタルトを販売することに?
「果物をそのまま販売するだけでなく、『お客さんにもっと果物を楽しんでもらう方法は?』と考え、鮮やかな色、ほおばった時の食感が果物そのものに近いタルトに行き着きました。県内の農家から、小さかったり形が悪かったりして、農協に出荷できない果物を安く仕入れているので、ふんだんに使えます」
──こだわりは?
「主役はフルーツなので、生地は甘み、塩味(えんみ)を控えめにしています。バターや砂糖の量を細かく調整し、2年かけて納得のいく生地ができました。また、さつまいもや黒豆など甘みが強い素材の時は、あえて塩味を少し強め、味のバランスを整える工夫をしています」
未来を明るく
──メニューは?
「今、並んでいるタルトはイチゴやみかん、キウイなど。近々ハッサクも出します。暖かくなってきたら、イチゴやブルーベリー、デコポンなどの手作りシロップをかけたソフトクリームも。さらにそのソフトクリームとシロップを専用の容器に入れ、ストローを差してシェイク感覚で飲むパウチソフトも販売します。将来的にはフルーツサンドも出せたらなと。色々な形で、フルーツ王国和歌山の味を堪能してほしいですね」
──今後の目標は?
「農業の未来を明るくすることです。そのため、生産者さんがお客さんとコミュニケーションをとりながら販売するイベントを実施します。ベテランはもちろん、若い世代が仕事へのやりがいと誇り、そしてワクワクする気持ちを感じる場にしてほしい。また、夏にブルーベリーの摘み取り体験を行います。子どもに農業の楽しさを伝え、未来の農家さんづくりに貢献できればうれしい。しんどくて、土や泥だらけのイメージが農家にはあるかもしれません。でもそれだけじゃない。イキイキと、育てた野菜や果物の話をする生産者に会いに来てください」
【バードコール・フィールド】
紀の川市古和田499-1
営業時間 10:00~18:00
電話 0736・79・3755
定休日 月曜
(ニュース和歌山/2023年2月25日更新)