春夏合わせて甲子園最多となる通算68勝を上げた智辯和歌山の髙嶋仁名誉監督。今年の大会見通しや、センバツの意義、印象に残る智辯和歌山の試合を語ります。また、子ども始球式など野球への関心を高めるセンバツならではの活動がある反面、子どもの野球離れは深刻。対策も提言してくれました。 (文中敬称略)
髙嶋名誉監督 意義を語る
── 今回のセンバツは。
髙嶋 昨秋の明治神宮大会を制した大阪桐蔭はじめ、仙台育英(宮城)、広陵(広島)、さらに沖縄尚学、山梨学院などが有力です。智辯和歌山の投手は、右の清水(風太)、左の𠮷川(泰地)とも試合をつくれて、打線も強力。どこと当たっても良い試合になるでしょうし、乗れば一気に駆け上がることもあります。
秋季敗退でも出場の可能性
── センバツの意義は。
髙嶋 勝ち残った1校だけが出る夏と異なり、負けた学校にもチャンスがあるのがセンバツの利点です。うちも1999年秋の近畿大会初戦で東洋大姫路に敗退。それでも、接戦だったこと、直前の国体で優勝したばかりで練習ができなかったことなどが加味されたのか、選ばれました。力のある選手がそろってましたし、その時に準優勝したことが自信となり、夏の全国制覇につながりました。
── 21世紀枠は。
髙嶋 あと一歩で甲子園を逃してきた学校、特に公立には良いシステム。普段は出られなかった学校が甲子園を経験できることに意味があります。
大逆転から勢いづいて
── 印象に残る試合は?
髙嶋 一番は初優勝した1994年春、準々決勝の宇和島東(愛媛)戦です。8回終了時、0─4で負けていましたが、9回表にヒットや四死球で追い上げ、2アウト満塁から3塁打で逆転。追いつかれたものの、10回表に勝ち越しました。甲子園にはそれまで6回出ていながら、前年夏に初勝利したばかり。これで勢いづき、のぼりつめました。「こういう試合をモノにするから甲子園で優勝できるんだ」と自信をつけさせてもらった試合です。
── 他の試合では?
髙嶋 96年の準決勝、高陽東(広島)戦です。0─2とリードされた8回裏2アウトから6連打で4点取り、逃げ切りました。8回の攻撃時、野手陣に「好投の高塚(信幸投手)を負け投手にするのか」と発破をかけました。
野球好きの子続ける環境を
── 子ども始球式など甲子園ではセンバツだけの取り組みもしていますが、野球離れが進んでいます。
髙嶋 色んなスポーツがあり、選択肢が増えたのも一つですが、少年野球で指導者が勝ちにこだわり過ぎなのでは。加えて、昔ながらの厳しすぎる指導も問題です。野球に関係のないことで辞めてしまうのは残念。指導者こそもっと勉強するべきなのに、(全日本野球協会が)毎年開いている指導者講習会に出る人は少ない。技術はもちろん、ケガ予防や効果的な言葉のかけ方など多岐にわたる良い機会です。指導者自身が変わることで、野球から離れない環境をつくってほしいです。
(ニュース和歌山/2023年3月11日更新)
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