《回答者》
◆消化器外科・一般外科
福外科病院
消化器外科専門医
大腸肛門病専門医
消化器病専門医
福 昭人院長
痔と区別しなければならないのが直腸脱です。直腸脱とは、おしりのしまりが弱くなり、直腸が全周にわたって肛門から脱出する病気です。直腸壁の粘膜だけが脱出するものを不完全直腸脱と呼び、直腸壁全体が反転して脱出しているものを完全直腸脱といいます。
完全直腸脱を発症しやすい年齢は幼少期と成人期に分けられます。成人型直腸脱は骨盤底筋群と肛門括約筋の弛緩で生じ、脱出を繰り返すことでさらにおしりのしまりがゆるくなり、悪化します。始めは違和感だけですが、次第に1~10㌢の直腸壁が反転して、その全層が肛門から脱出します。高齢者に多く、排便時のみ脱出するものの容易に戻るうちは病院に行くことは少ないですが、排便後に戻らなかったり、立っているだけで脱出したり、出血を伴うようになってから受診することが多いです。
診断は容易で、下腹部に力を入れて、いきんでもらった状態で視診し判断できます。しかし、専門医でないと痔の脱出の脱肛との鑑別が困難なことがあります。
治療は外科的治療で、経肛門的手術と腹腔鏡手術から選択します。かかりつけ医に相談し、大腸肛門病専門医を紹介してもらってください。
(ニュース和歌山/2023年4月23日更新)