18歳選挙権が今夏の参院選から適用される見込みです。これにより、新たに対象となる18歳、19歳は全国で約240万人。参院選では高校3年生の約3人に1人が有権者となります。

 県や市の選挙管理委員会は、学校の要望に応じて選挙の仕組みや投票の重要性を伝える出前講座を開き、模擬投票を行うなど啓発に注力。模擬投票では、投票所入場券や投票箱を準備し、本番さながらの投票行為ができるよう工夫しています。

 こういった体験は、少なくとも「投票に行くのは面倒」といった意識を薄れさせるのに、効果があるはずですし、実際に投票する前の備えにつながります。特に、教育現場で「選挙」を考えることは、18歳になった人だけでなく、後に続く同学年や後輩たちへの影響も含めて、意義は大きいでしょう。

 一方で、若年層の投票率の低さを指摘し、「政治に無関心すぎる」との声は高齢層を中心に根強いものがあります。

 指摘は確かに当たっています。ただ、なぜ無関心層が増えたのか。その原因は何なのかを、この機会に考えたいのです。

 気になるのは、投票率が高い層のどれほどが、立候補者の政策を吟味し、票を投じてきたのか、です。就職の口利きや、工事受注に手ごころを加えてくれた人を「良い議員さん」と応援しませんでしたか。所属団体が推すからと、余り知らない人に票を入れませんでしたか。

 「井戸塀」という言葉があります。「世のため人のため」と政治活動に私財を投じた結果、大邸宅も井戸と塀しか残らない。政治家とはそれほど志の高い人を指したのです。

 ひるがえって現代、政治家には、収賄を始めとする不祥事を起こす人であったり、お金持ちが世襲でする仕事といったイメージがつきまといます。もちろん、希望に燃え、明日のために働こうと考える人が大半だとは思いますが、こういった負のイメージが政治的無関心層を増やしている面も否定できません。

 選挙管理委員会は出前講座で「新聞やHP、街頭演説で候補者の政策を知り、投票について家族で話し合ってほしい」と訴えています。今回の18歳投票権導入を、本来の政治や選挙の姿とは何なのか、改めて考える契機としたいのです。  (小倉)

 ※3月4日(金)午後6時、和歌山商工会議所で18歳選挙権をテーマにワークショップが開かれる。詳細は総務省HP。

(ニュース和歌山2016年2月13日号掲載)