町の本屋さんが減っている。ぶらくり丁では数年前に老舗の宮井平安堂、津田書店、昨年は県庁前の上野山書店が閉店した。先月も和歌山駅近くの書店が営業を終えた。大型書店が増えたことが大きいのだろう。とても寂しい▼和歌山市に住んでいて不満なことのひとつが読書の文化がほぼない点だ。私が過去に暮らした町には、著者やデザイナーを呼んでイベントを開く店、書評ジャーナルを発し、長年、本好きの人のコミュニティを保つ店、地方出版の本を大切にする店があった。同じ和歌山でも紀中や紀南には個性的な店が生まれている▼思うに、和歌山の人は読書を少々堅苦しくとらえすぎるのではないか。一冊の本について感想を交わし、未知の領域の書物を教えてもらうことは出会いそのもの。私はそれが道楽であり、同時に文化だと思う▼将来、南海和歌山市駅に市民図書館が入る。今までにない機能も持たせるという。和歌山なりの読書文化が生まれるきっかけになってほしいと切に願う。 (髙垣)
(ニュース和歌山2016年4月9日号掲載)