〝あやしい〟と読む漢字を2つ並べた「妖怪」。この言葉で思い浮かべるものは何でしょうか? ゲゲゲの鬼太郎? 今の子どもたちなら、妖怪ウォッチの方が多いでしょうか。
ニュース和歌山愛読者の皆さんは、「最近、妖怪関連の記事が多いな」と思われている方が多いかもしれません。2016年に始まった漫画家、マエオカテツヤさんによる連載「妖怪大図鑑」が100回を超えた先月、妖怪70体をまとめた本を出版。そのイラストを展示した妖怪電車が貴志川線で4月19日まで走り(運休日あり)、和歌浦の純喫茶リエールでもイラスト展を5月7日まで開催中です。
こうして紹介する妖怪たちは今、絶滅の危機です。マエオカさんはその理由を「妖怪がすむ闇がなくなったから」と語ります。闇の中の不思議な音や気配。そこで芽生えた恐怖が妖怪を生み出してきましたが、夜でもこうこうと明るければ生まれようがない。科学の発達で原因が分かり消えてしまったかまいたちや山彦のような妖怪もいます。
絶滅しても困らない? いや、妖怪には自然とのつきあい方、距離の取り方を教えるため、昔の方が生み出したものが多いように感じます。水中に引き込み、血を吸うカッパなら、「川で遊ぶときは注意しよう」、夜、海に一人でいる幼い子を海底に引きずり込む青い海犬なら、「暗くなったら海に行ってはいけないよ」といった具合です。
また、マエオカさんは「妖怪の向こうに、その妖怪が存在した時代の風俗や風習が見える」と強調します。和歌山を代表する妖怪ダルは分かりやすい例でしょう。熊野古道を旅する人に取りつき、力を奪うこの妖怪。米を一粒でも食べればどこかへ行ってしまいます。車も電車もなく、歩くしかなかった熊野への旅路、その過酷さが分かりますし、旅の際は準備を怠らないよう教えてくれています。
本物の妖怪もいるかもしれませんが、先人の知恵が詰まった妖怪も多いでしょう。奥深い妖怪の世界へ、貴志川線やリエールでの展示を見ながら、足を踏み入れてみませんか。「この妖怪、どうやって生まれたんだろう?」と考えながら見るとなかなか楽しいものです。マエオカさんが描く愛くるしい妖怪たちは「なんかようかい?」と人なつっこく迎えてくれること間違いなし。その際の参考書として、『マエオカテツヤの和歌山妖怪大図鑑』をお忘れなく。 (西山)
(ニュース和歌山/2018年3月24日更新)