店に並ぶレトルトカレーとカレールー、どちらを手に取ることが多いですか? 売上高を見ると昨年初めて、レトルトカレーがカレールーを上回ったそうです。背景にあるのは単身や共働き世帯の増加だとか。ルーを使って鍋一杯作っても、1人暮らしなら余りますし、何日も同じものを食べたくない。一人分を手軽に用意できるレトルト派が増えるのはうなずけます。
1世帯当たりの人数は年々減っています。先日、和歌山県が発表した今年4月1日時点の人口は93万8107人で、前年より1万153人のマイナスでした。逆に世帯数は176増え39万2931に。1世帯の人数は当然減り、2・39人と過去最少でした。人口の減り幅も気になります。調査開始以来、1年間で1万人以上割り込むのは初めてです。
国立社会保障・人口問題研究所が3月末に公表した2045年の推計人口もショックな数字が並びました。県人口は68万8031人となり、2015年からの30年間で実に3割近く減る予測です。本紙配布地域では、岩出市こそ6・2%減の5万143人だったものの、和歌山市は29万6577人(18・6%減)、紀の川市は4万505人(35・3%減)、海南市は3万3116人(36・1%減)、紀美野町にいたっては3654人(60・3%減)となっています。
急激な人口減少は、消費の縮小、それに伴う地域経済の悪化、社会保障費の負担増など様々な影響を及ぼします。県は、2060年に70万人を確保するため、「長期人口ビジョン」と、これを実現させる「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、3年前から5年計画で雇用創出や転出超過数の減少、少子化対策などの施策を進めています。ただ、これも人口増や現状維持を目標としていない点で、人口減はもはや避けられないことを表しているのでしょう。
人口減で経済成長が見込めないなら、経済以外に価値を求めるだけです。注目しているのは、県が昨年立ち上げた「元気シニア生きがいバンク」。地域で活動したいシニアと、その力を求める団体を結ぶ取り組みです。知識や技能を持つお年寄りが地域で輝き、高齢者の健康増進や介護予防にもつなげる──。
とかくマイナスイメージがつきまとう高齢化を、このような取り組みで逆手に取れないものか。あくまで一例ですが、経済優先ではない社会を設計していく時期に来ています。 (西山)
(ニュース和歌山/2018年5月26日更新)