数分で死に至る点滴の栓を自分で開き、「最期にこんなに見送られるなんて想定外。すごく幸せだった」と涙を流す姉2人に笑顔で伝え、永遠の眠りにつく女性。ある夜見たドラマのようなシーンは、ドキュメンタリー番組の一幕だった▼外国人の安楽死を受け入れるスイスに渡り、命の終わりを自ら迎えた難病の日本人を追ったNHKの番組が6月2日に放送され、「尊厳死だ」「自殺幇助(ほうじょ)ではないか」と大きな議論を呼んでいる▼番組では、歩行や呼吸など多くの機能が失われる進行性の病に苦しみ、自殺未遂を繰り返した末の決意であることや、家族の葛藤する様子が映された。「自分の意思を伝えられるうちに命の終わりを迎えたい」との強い気持ちに、「自分や家族なら?」と考え込む▼スイス人医師によると、安楽死を申し込む日本人は年々増えているそうだ。渡航距離や数百万円に上る費用、言葉の壁と、実現はたやすくない。日本でも、積極的に語られるべき局面が訪れている。 (島本)

(ニュース和歌山/2019年6月29日更新)