先週、久しぶりに実家へ顔を出した。両親の仲は良いが、母が「シラスが食卓に出しっぱなしだった」と父に詰め寄っている最中だった▼そんな母が娘の筆者に勧めた本がある。黒川伊保子さんの『妻のトリセツ』(講談社+α新書)だ。脳科学の観点から妻の不機嫌や怒りの理由と、夫側ができる対策法を説いた本で、35万部を突破している▼特に、妻は感情に伴う過去の記憶を「みずみずしく取り出す」ことが得意との指摘には、膝を打った。命がけで出産中の筆者の横で、夫の「僕も産んでみたい」との軽々しい言葉に、分娩台から滑り落ちそうになったのは、まるで昨日のことのようだ▼ここ30年、同居年数が20年以上経つ夫婦の熟年離婚は2倍、30年以上は4倍に増えている。定年退職後も居心地良く暮らしたいなら、互いに行動の根本を理解し、歩み寄る姿勢が大事だ▼この本の効果が一番あるのは、新婚夫婦だという。妻の〝弾丸〟が1発でも減るよう、来週結婚式を挙げる友人の懐にそっと忍ばせたい。 (井本)

(ニュース和歌山/2019年9月14日更新)