新聞記者という仕事の中でも、地方紙の記者は特別だ。全国紙の記者は他府県へ転任してしまうが、地方紙だと異動がないため人脈は広がり、何度も取材するうちに信頼関係が深まる。生活者の一人として読者と一緒に紙面作りをできるのが魅力だ▼入社から13年、自らの課題意識やふとしたご縁で、子育て、高齢者や障害者の福祉、環境問題、伝統芸能など様々な分野を取材してきた。それぞれの場面で現状をより良くしたいとの思いを聞き、勇気をもらえた▼中には、筆者が結婚し子どもが生まれた時、親戚のように喜び、祝ってくれる人も。また、取材で世話になった人が突然他界し、涙したこともあった。記者という仕事の枠を超え、たくさんの喜びや悲しみを分かち合う中で、故郷の居心地の良さを感じた▼筆者は10月から今の仕事を離れ、新たな職場に移る。市民の声に耳を傾ける記者から、地域で実践を重ねる当事者へ。肩書きは変われど、故郷に深く根ざした立ち位置は変わらずに保ち続けたい。 (林)

(ニュース和歌山/2019年9月21日更新)