「災害の記憶」を発掘する

 先日、9回目の3月11日を迎えました。9年前の東日本大震災では「津波の恐怖」を思い知らされ、その半年後の紀伊半島大水害では「土砂災害の恐怖」を目の当たりにしました。この二つの大災害の経験をきっかけに、「災害の記憶」を発掘・共有・継承する事業を国庫補助を受けて始めました。

 地震・津波や洪水・土砂災害に遭った先人たちは、後世に伝えるべきメッセージを色々な形で残しています。それは形のない「伝承」であったり、形のある「記録」であったりします。南海トラフ地震や豪雨災害への意識が高まりをみせる一方で、先人たちが伝えようとしたことが眠ったままになってはいないだろうか。そんな問題関心からまず取り組んだのは、各地に残る「災害の記憶」を掘り起こすことでした。

 屋外にあって、だれでも見ることができる過去の災害を記した石碑に注目。災害記念碑をリストアップし、県立博物館HPに「県内に所在する災害記念碑一覧」を掲載して、情報提供をお願いしました。2014年から毎年、調査対象の市町村を決め、調査チーム6人で現地を回りました。

 石碑調査は、位置を確認し、寸法を測り、写真を撮るなど情報を記録していきます。次に記された内容を書き写し、地元の方に話を伺います。調査を進めるにつれ、石だけでなく、紙や木の板にも記されていることや、「災害の記憶」の内容が必ずしも正確に伝えられていないことが分かってきました。

写真=新宮市熊野川町九重での石碑調査

(ニュース和歌山/2020年3月14日更新)