「災害の記憶」を共有する
発掘した「災害の記憶」は、地域の皆さんと共有しないといけません。ところが、先人が残してくれた記憶を正確に共有するには、越えなければならない壁がありました。
紙や木の板、石に書かれた文字は大抵の場合、くずし字です。しかも昔の言葉で書かれているため、今の私たちにはとっつきにくいわけです。
そこで、くずし字や昔の言葉で書かれたものを、現代語に訳すことで、大まかな内容が分かるようになりました。ただ、忘れ去られた言葉や、現在の地図にない地名が出てくると、それが何を意味し、どこを指すのか、外から来た私たちには分かりません。村の歴史をもっと調べないといけないと思い、古い史料が残されていそうな旧家を訪ねたほか、地元の研究者に会って話を聞き、伝えられてきた記憶をより具体的にイメージできるようにしました。
こうして調査した成果は、1年ごとに小冊子『先人たちが残してくれた「災害の記憶」を未来に伝える』Ⅰ~Ⅴにまとめ、掲載地域の全世帯に配っています。県立博物館のHPでも公開しています。便利な現在の地図も載せました。「災害の記憶」を伝える資料を実際に見たり、残されていた現地を歩いたりすることも大切だからです。
現地学習会「歴史から学ぶ防災」も開催しています(写真)。地元の研究者にも加わっていただき、調査で明らかになった内容や地域に残る貴重な文化遺産の話をし、防災活動や文化遺産の保全活動のあり方を、地元の方と一緒に考える機会を設けるのが目的です。参加者からは「災害の記憶」を伝える資料の存在は知っていたものの、詳しい内容までは知らなかったという声が多くありました。先人のメッセージを地域で共有し、それを次代へ継承していくことが重要になってきます。
(ニュース和歌山/2020年3月21日更新)