「災害の記憶」を継承する
共有した「災害の記憶」を未来に継承する方法の一つとして考えたのが、継承する担い手となる中・高校生の皆さんの活動を、私たちがバックアップすることです。その一例を紹介します。
印南町には印定寺というお寺があり、1707年の宝永地震津波の犠牲者を供養する高波溺死霊名合同位牌や、高波溺死霊魂之墓碑があります。位牌には、津波に襲われた170人以上が亡くなった惨状、墓碑には津波の到達水位が分かる記述が残っています。また、安政地震津波で浸水被害を受けた蔵の板壁には被害状況が記され、その板壁が町で保管されています。
印南中学校では、私たちの調査成果も生かした防災学習と地域への普及活動を行っています。生徒たちは地元の「災害の記憶」を調査し、現代語訳の朗読や、紙芝居にして小学校で上演(写真上)することで、津波災害をより身近に感じようとしています。
この度、私たちが行った5年分の調査に、紀北地域の水軒堤防(国史跡)や万代日並記などを加えた冊子『「災害の記憶」を未来に伝える─和歌山県の高校生の皆さんへ』(同左)が完成し、4月に県内の高校で配る予定です。県立博物館HPでの公開や希望者への配布も行います。また、冊子を手に現地を歩けるよう、QRコードで地図を表示する工夫もしています。
写真やインターネットがなかった時代に、先人たちが私たちに伝えようとした「災害の記憶」を、今度は私たちが未来に伝えなければなりません。そうした活動に冊子が活用されることを願っています。
(ニュース和歌山/2020年3月28日更新)