昨春、南海和歌山市駅前で58年の歴史に幕を閉じた喫茶店「ヱモン」を取材した。その際に聞いた、デートや待ち合わせにと活況だった時代の話が心に残り、休日に純喫茶を巡っている。「常連客ばかりかも? どんな感じ?」と、扉を開く時は毎回少しドキドキする▼インターネット全盛の今でも小さな老舗店の情報は乏しい。タウンページをめくったり、実際に街中を走ったりして見つけ、ちょっとした宝探しのよう。今にない豪華な内装、ロゴマーク、古びた食品サンプルやジュークボックスにグッとくる。どれひとつ同じ雰囲気の店はない▼多くの店で、高齢の店主が店や町の思い出話とともに「いつやめようかと思いつつ続けている」「なぜか遠方から若い人が来て写真を撮っていくことがある」と話してくれた▼喫茶店が大流行した1970年代に開店した店もまもなく50年を超え、一体いつまで安らぎの一杯を与え続けてくれるか? 記録でなく記憶に残るよう、ゆっくり一軒一軒味わっていこう。(宮端)
(ニュース和歌山2015年4月11日号掲載)