和歌山市新通にあった旧・和歌山無尽(現・紀陽銀行)本店が春に解体された。最近見に行くと、跡地は駐車場。昔を伝える物は見当たらなかった▼大正時代のコンクリート建築。表面はレンガで覆われ、一部の窓は上部が半円形で、重厚さと柔らかさが同居していたのが印象的だった▼また、建て替えが決まった市駅ビルもレンガの外壁が特徴だ。正面上部がアーチをなし、下に突き出す屋根は大阪万博お祭り広場にあった大屋根のよう。落ち着きと近未来性を合わせ持つスタイルが斬新だった▼無尽も市駅も、老朽化に伴い耐震性など問題が出たのだろう。時代を彩った建物でも、保存されるのはごく一部。大半は取り壊しと共に、そこで育んだ記憶まで、あっという間に薄らいでゆくのが残念だ▼ただ、市民の願いが大きければ、保存への道が開けることもある。まずは、時代を表す建物に触れること。9月5日(土)午後1時半、同市立博物館で歴史的建造物の映像上映会がある。思いを至らすきっかけとなれば。(小倉)
(ニュース和歌山2015年8月1日号掲載)