和歌山市駅前大通りで今月12日、13日と、「市駅〝グリーングリーン〟プロジェクト」が開かれました。和歌山大学や駅前商店街、住民でつくる「市駅まちづくり実行会議」の企画です。大通りの一部を歩行者天国にし、芝生を敷き、カフェを設け憩いの空間にしました。両日とも多くの人でにぎわいました。
その一環で開かれた「市堀川クルーズ」に参加しました。大阪市立大の研究者が開発した電気とディーゼルの両方で動くハイブリッド船を市堀川に出し、市駅前から中ぶらくり丁東の雑賀橋までを行き来し、船旅を楽しんでもらうものです。
市の中心街を流れる「内川」(市堀川、和歌川、大門川、真田堀川、有本川の総称)にボートや船を出し、地域資源としての可能性を探る取り組みはこれまでもありました。今回は市堀川を選び、町歩きとセットで提案したのが特色です。
昔の内川を知る世代からすると、船で走れるまでになったことは感慨深いでしょう。美化に努めた人々の労苦に恐れ入ります。水上からの眺めについては寄合橋、京橋をくぐるのは新鮮でしたが、川に背を向けた建物の風景は絶景とは言えません。それでも水面を伝う風は潮の香りを少し含んで心地良く、船を降り、マーケットを開催していたぶらくり丁を歩くと、ふわりと気分の高まりを覚えました。
ああ、まちは陸だけで成り立っているのではないな、と素朴に感じました。江戸期の地誌書「紀伊国名所図会」に彩色した『城下町の風景』(額田雅裕解説、芝田浩子彩色、本紙発行)を開くと、市堀川には夕涼みの屋形船が浮かび、京橋には荷船がひしめいています。寄合橋付近の建物は川に向かって建ち、内川が物流の要であり、城下町和歌山こそ陸と水路が交錯する水の都だったと教えてくれます。
しかし、戦後、内川は工場と生活排水で汚れ、排水路さながらになりました。それが近年、美化の成果もあり、まちの魅力を探す人の気をひいているのです。昨日25日からは市営京橋駐車場で、屋台村「まちなか河岸・にぎわい横丁」(10月1日まで)が始まりました。市堀川沿いを江戸時代風に演出し、ひと時をすごしてもらう試みです。
暮らしの彩りか。魅力的な空間を演出する舞台としてか。中心市街地の再構築を控え、陸と川との新たなかかわりの創出は城下町の秘めた個性を輝かせると思います。(髙垣)
(ニュース和歌山2015年9月26日号掲載)