会期前競技を含め、1ヵ月にわたる紀の国わかやま国体が終わりました。準備期間が長かっただけに、始まってみるとあっという間に感じられました。
報道の特権で、一般席より選手に近い場所から観戦…いや、取材させてもらう機会に恵まれました。限られた時間の中で足を運んだのは9競技。陸上は桐生祥秀選手はじめ、トップ選手はやっぱり速く、ファインダー越しに追うのがやっとでした。初めて見る自転車競技は「ここまでのレース、まさにパワー全開という力強さを見せる〇〇選手!」「にらみ合って僅差の接近戦、制したのは〇〇選手!」と実況が流れるため分かりやすく、競技に明るくない私も十二分に楽しめました。ボウリングの個人戦ではストライクを出すと、同じレーンで戦う他府県の選手と軽くハイタッチ。試合後に健闘を称えて握手するシーンは他競技でもありますが、試合中に行われるのは新鮮でした。
涙をこらえることもしばしば。この大会での引退を決めた湯元進一選手、決勝戦でセコンドに入ったのは一緒にレスリングを始め、切磋琢磨してきた双子の兄の健一さんと、レスリングの基礎をたたき込んだ父の鉄也さんでした。2面に写真を掲載した自転車の橋本凌甫選手、胴上げしているのは他府県の選手たち。試合が終わればノーサイド、ライバルも惜しみなく称える、感動的なシーンでした。
チーム和歌山の選手たちには和歌山を背負う重圧が私たちの想像以上にあったと思います。3位入賞しながら期待された優勝に届かず会見中悔し涙を流す選手、結果を出せず、試合終了と同時にその場にひざをつき立ち上がれない選手、ベンチに戻り客席に礼をしようとした瞬間、我慢していた涙があふれ出した選手。優勝した選手もその表情には喜びより安堵の方が濃いように感じました。この重圧に打ち勝った自信、今回克服できなかった悔しさは、必ずや次に生きるはずです。
運営を滞りなく終えた行政や競技関係者も自信を深め、どの会場でも笑顔で迎えてくれたボランティアは、もてなしの心が磨かれたことでしょう。いっぱいの贈り物をくれた国体、「良い思い出になった」「道路が整備されて便利になった」「施設が新しくなって良かった」で終わらせず、これら得たものを次にどう生かしていくか。これを考え、実行してこそ、国体は成功と言えると思います。(西山)
(ニュース和歌山2015年10月10日号掲載)