今日(2015年12月26日)は本年の本紙発行最終日で、紙面で1年をふりかえっています。今年は県内各地ににぎわいが生まれた1年でした。特に紀の国わかやま国体・大会は街を活気づけました。

 2011年の東日本大震災以後の国体は「震災復興支援」をうたっています。今大会に合わせて、県は岩手、宮城、福島3県の小学校1263校28万人に和歌山のみかんを贈りました。みかんへのお礼が県に相次ぎ、一部が和歌山県庁正面玄関に展示されています。「今までで一番おいしかった」との児童から喜びの声、「東北を忘れず、思いあふれるプレゼントでした」と学校からはお礼が寄せられています。

 また、気づかれた方もいらっしゃったでしょうか。大会会場である紀三井寺陸上競技場を、東北のひまわりが彩りました。

 宮城県石巻市立大川小学校は、児童108人のうち74人が津波によって死亡・行方不明になりました。児童の遺族らが、同小近くにある三角地帯でひまわりを育てています。かつて一緒に季節の花を植えた思い出の場所で、子どもたちの姿を胸に留めているのです。

 このひまわりの種が数年前、震災支援に赴いた団体を介して和歌山へ渡りました。今年は和歌山市、海南市などの小学校、和歌山市の連絡所へと広がり、学校では命の大切さを伝える教材にしています。この種を、県の農業試験場で秋に咲くよう調整し、国体の会場で東北の選手を迎えたのです。

 娘を亡くし、今もひまわりを育てている石巻市の女性は和歌山の人に向け、こう語ってくれました。「震災で多くの人が亡くなったことを受け止め、1人でも津波に前もって気をつけるようになってほしい。それが1人、2人の命を救い、悲しい思いをする人を減らせます」。そして「子どもたちには毎日を大切にして、ひまわりのような笑顔で過ごしてほしい」とおっしゃっていました。

 東北から来た種は、悲しみに寄り添いながら、私たちが日々、あたりまえに過ごせることへの祝福と祈りだと思います。その種を至る所に咲かせようとするなら、私たちにはちょっとした心の努力が必要です。家庭なら皆が安心して過ごせるように。地域なら大人が子どもを温かく見守り、つながりの中で生きていると思えるように。来年も季節、時と場所を問わず、いい笑顔を咲かせたいです。 (髙垣)

(ニュース和歌山2015年12月26日号掲載)