現代社会の変化にともない、学校教育も大きな変革の波に洗われています。筆者が専門とする社会科教育もその例外ではありません。
現在、社会科教育に求められている変革は何点かあります。そのひとつが社会参画です。たとえば、2008年の学習指導要領改訂では、社会科、地理歴史科、公民科の「改善の基本方針」のひとつに「公共的な事柄に自ら参画していく資質や能力の育成」が挙げられ、さらには22年度をめどに高校で新しい科目「公共」を設けることが提案されるなど、その重要性はますます高まっています。
このような動きは日本だけでなく、グローバル化のなかで、「シティズンシップ教育」を実施する国が増えてきました。日本でも、低迷する若年層の投票率と、18歳選挙権の問題を取り上げるまでもなく、社会参画にかかわる教育の必要性には賛同していただけるのではないでしょうか。
ところが、現実の社会科授業には、時間的にも空間的にも大きな制約が課せられています。いわゆる「トーク&チョーク」の授業、つまり、先生が前に立って社会について説明し、それを子どもたちが無批判に受容する授業になってしまうのにも、無理からぬ面もありそうです。しかし、そのような授業ばかりでは、子どもたちは社会について、自分とは無関係に存在しているもの、自分がどのように働きかけても変革不可能なものととらえるようになってしまうのではないでしょうか。
社会のなかで日々生活している子どもたちは皆、社会についての自分なりの考え(社会認識)を持っています。しかしそれは、偏っていたり、あるいは根拠不充分なものであったりするかもしれません。そのような個々の社会認識を出し合い、友だちの考えと自分の考えを比べたり、自分の考えの不充分さに気づいたりしながら、世の中についてみんなで考えていくことの大切さに気づいていく。それが、社会参画ができる子どもを育てるという遠大な目標への第一歩になるのではないかと考えています。
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和歌山大学とニュース和歌山は毎月原則第1土曜、和歌山市西高松の松下会館で土曜講座を共催。次回は1月9日(土)午後2時。講師は経済学部の阿部秀二郎准教授で、演題は「経済学と経済学者:経済学の二つの流れ」です。
(ニュース和歌山2015年12月26日号掲載)