「いっただきまーす!」。元気いっぱいの声が響き、一斉にご飯を食べ始める子どもたち。20日に和歌山市布施屋の河南コミュニティセンターで開かれた子ども食堂「わくわくげんき」には子どもから大人まで約50人が集まりました。

 今年に入り、世間の関心の高まりと共に、本紙配布地域でも子ども食堂が3ヵ所立ち上がりました。背景にあるのは貧困問題。20日の食堂を企画した紀の川市で弁当店を営む大江隆之さんのもとには、食材や食器などの提供、調理の手伝いなど、農家、主婦、会社員と様々な立場の人が協力を申し出たそうで、「関心の高さに驚きました。世代、分野の分け隔てなく、『力になりたい』との思いは同じでした」と振り返ります。

 国の調査では、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合を「子どもの貧困率」としており、この数字は1985年の10・9%から2012年には16・3%に悪化。特に1人親家庭の貧困率は54・6%と高く、経済的な苦しさを浮き彫りにしています。

 山形大学の戸室健作准教授は都道府県別の子どもの貧困率を独自に調査。今年2月に公表し、和歌山は17・5%でワースト9位でした。こうした状況から、県は今年度、食堂の立ち上げに必要な設備購入費や改修費への補助を始めました。

 20日に参加した母子は食事を皆で作って食べ、スポーツチャンバラを体験。別の参加者の保護者から勉強を教えてもらい、「塾へ行かせる余裕もないので勉強を教えてくれるのはありがたい」と喜んでいました。貧困問題は、食事の問題だけでなく、教育格差も引き起こします。また、親子のコミュニケーション不足が虐待につながることも少なくないと、以前、弁護士から聞きました。

 一般に「子ども食堂」と聞くと、経済的な理由で満足に食べられない子どもたちに食事を提供する活動を思い浮かべる人が多いと思います。しかし、実際はそれにとどまらず、他の家庭とのつながりができ、力になろうと集まった人とのふれあいが生まれています。これは、社会から孤立し、学力格差や虐待など負の連鎖に陥るのを食い止めるセーフティネットへとつながっていく可能性を秘めています。子ども食堂の広がりが、地域の温かいまなざし、支え合いの精神をさらに育んでいくことを願います。(林)