先日、車を運転中、屋形町交差点で信号待ちをしていた時のこと。サイレンを鳴らしながら、救急車が対向車線を走って来ました。しかし、赤信号で停まっていた2車線計15台ほどがじゃまで進めません。道路の端に移動させようとしているドライバーも数人いましたが、先頭の車が全く動かないのです。

 その車の運転席に目を凝らすと、50代ぐらいの男性が何やらにこやかに携帯電話でお話中。しばらくして、救急車からのアナウンスに気づいたのか、ようやく車を動かしました。携帯電話を耳に当てたままで…(運転中の携帯電話使用は禁止です)。

 同じような経験はこの日だけでなく、以前から気になっていました。和歌山市消防局に尋ねると、携帯電話で話し中なのか、車内で音楽に夢中になのか、その理由は分からないものの、救急車が来てもなかなか端に寄らない車は増えているように感じるとのことでした。

 救急車が現場到着までにかかる平均時間は年々、長くなっています。和歌山市では1995年が4分20秒だったのに対し、昨年は7分10秒と、20年で3分近く伸びています。この傾向は全国で見られます。

 理由の1つが救急出動件数の増加です。同市では95年が1万1066件でしたが、昨年は1万9040件と8000件近い増。もちろん高齢化も影響しているでしょうが、救急車の〝コンビニ利用〟と呼ばれる、緊急でない人からの119番通報が増えているのです。

 「虫に刺された」「日焼けでひりひりする」…。中には救急車で行けば順番待ちすることなく、すぐに診(み)てもらえるからという人もいるそう。通報した場所から最も近い消防署の救急車が出払っていれば、離れた消防署から駆けつけることになる。結果、到着までの時間はその分かかってしまうのです。

 全国消防協会が作成したポスター。左に「呼吸困難」「胸痛」「突然の激しい頭痛」、右に「足がつった」「靴ずれが痛い」「日焼けが痛い」の文字があり、「今、本当に必要なのはどっち?」と問うています。サイレンの音も聞こえないぐらい夢中になっている携帯電話でのそのお話、後ではダメですか? そんなに夢中になっていて動き出した時、周囲の歩行者や自転車、バイクなどに気づけますか? 119番した人には1分1秒を争う患者も多いのです。ルール厳守とモラル向上を望みます。(西山)

(ニュース和歌山2016年10月8日号掲載)