仕事への姿勢を徹底的に取材するNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』。1月16日の放送では、たびたび和歌山市の街並みが映し出されました。密着されていたのは、全国でリノベーションによる都市再生を手がける大島芳彦さん。和歌山が登場したのは、和歌山市で昨冬開かれたリノベーションスクールの一コマでした。
ここ数年ですっかり耳にすることが増えた「リノベーション」。古い建物を生かしつつ、改修や使い方を変えて新しい価値を生み出す、との意味です。和歌山市では、3年前にリノベーションスクールが始まりました。スクールと言っても学校があるわけではありません。全3日間で、受講者がチームに分かれ、市街地の対象物件を題材に、事業計画を起こすものです。建築関係者のみならず、社会人に学生、主婦と幅広く、徹夜で取り組み、オーナーへのプレゼンテーションに臨みます。
実際に、内川沿いの日本酒バー水辺座、卜半町の食肉会館にできたカフェ29など、スクールによって生まれ変わった場所がいくつかあります。水辺座は建物が背を向けていた和歌山城の外堀である市堀川、そして対岸にある老舗酒造会社に着目。大胆に川を借景にし和歌山の地酒をそろえ、カフェ29はかつて輸入肉の配給拠点として使われた建物で、ローストビーフ丼などの肉料理を提供します。
番組は、大島さんに依頼した大阪のある古いビルの話をクローズアップしました。エレベーターもなく老朽化し、建て替えるべきとの声が多い中、大島さんは建物に愛着を持つ所有者家族の思いに耳を傾け、リノベーションで人が集うシェアオフィスに蘇らせる提案をしました。「古い建物を壊し新しく建てると過去はリセットされてしまう。先代の考えを理解して解釈し直す」との話が印象的でした。
南海和歌山市駅の建て替えに伴い、周辺は更地やコインパーキングが目立ち始めました。市街地への大学進出も決定し、いよいよまちなかの大変化が始まります。機能的な新しい建物が増えるでしょうが、まちに愛着を持てなければ「ここが故郷だ」との思いはわいてきません。新しさ、便利さを取り入れる開発と、建物やその場所のストーリーをひもといてゆくリノベーション。この二つのまちづくりがうまくマッチすれば、今までにないまちなかの表情、文化が見られそうです。(宮端)
(2017年1月28日更新)