「プログラミング教育」という言葉を聞いたことがありますか。パソコン操作を通じてコンピューターの仕組みを理解する授業で、文部科学省が14日に発表した学習指導要領の改訂案に小学校での必修化が明記されています。2020年度の全面実施を目指しており、道徳の特別教科化、小学校での外国語活動の前倒しと高学年での英語の教科化などと共に力を入れていく方針です。

 このプログラミング教育の授業を目にする機会がありました。IT企業のスタッフが講師を務め、タブレット端末を使用。授業で子どもたちが行ったのは、画面上に登場するキャラクターに「前へ進む」「右へ曲がる」などの指示を与え、与えられた課題を乗り越えていくゲームのようなものでした。ステージが進むごとに指示内容は複雑になり、効率良くクリアするための指示や順序をいかに組むかにかかってきます。「このやり方もできる」「こっちの方が早い」と、子どもたちは意見を出し合いながら楽しんでいました。

 授業に立ち会った教師は「大学でプログラミングの授業方法を習っておらず、不安はあります。しかし、授業用に考えられたソフトがあれば、子どもたちが興味を持ち、長時間集中して取り組めました。課題をクリアする中で問題解決能力もつきます」と喜んでいました。

 文科省は、インターネットが生活の様々なものとつながるIoTの浸透、人工知能が普及する第4次産業革命(IT革命)を見据え、社会や産業構造が変化しても自らの力で人生を切り拓く資質、能力を育もうと、今回の改訂でプログラミング教育を盛り込みました。IT人材は2020年に国内で30万人不足すると言われ、IT技術が発展する中で国際競争力を保つ上でも欠かせないのは理解できます。ただ、先の教師が話した通り、授業を支えるための人材育成や確保が未整備で、教材開発が遅れており、高い目標に現場がついて行けるか疑問です。

 授業で子どもたちに求められたのは、自らの考えを相手に分かりやすく指示するための「伝える力」でした。これはプログラミング以外のあらゆる生活場面で、時代を問わず必要とされる能力です。ITに関する知識や技術の取得と活用に終始せず、それを扱う人のコミュニケーション力や論理的に考える能力の育成を視野に入れた指導体制の具体化を願います。 (林)

(ニュース和歌山より。2017年2月25日更新)