わせだ式はさみの法則

 私が2017年から取り組む「やさしい日本語」は、日本人が話す言葉を外国人にも分かりやすいよう、簡単な単語と短い文を使った表現方法です。普段の会話を少し工夫すれば、だれでも使うことができます。

 ポイントは、「はっきり、最後まで、短く話す」。この3つを意識し、最初のひらがなを並べて、「はさみの法則」と呼びます。

 「はっきり」は、ハキハキとした発音で内容を明確に伝える。「最後まで」は、文末までしっかりと言葉にすることです。例えば「今ちょっと忙しいので」は、「ので」の後に言いたいことが隠されています。忙しいので具体的にどうしてほしいのかを省略せずに、言葉の最後まで言い切りましょう。何気なく会話する時に文末をあいまいにして終わる言い方は、外国人にとって伝わりづらい表現です。「短く」は、長い文章を短く区切り、単文にして話します。

 〝単文にする〟と聞くと難しそうに感じますが、そのコツが「わせだ式」の考え方です。「わせだ式」は、「分けて、整理し、大胆に話す」を意味します。「大胆に」とは尊敬語や謙譲語などの敬語を使わず、「です、ます、ください」で文を終わらせる言い方です。「どちらまで行かれますか」を、「どこへ行きますか」と言い換えます。この「わせだ式はさみの法則」を取り入れると、日本語を勉強したことのある外国人が理解できる言葉になります。

 毎月開く勉強会には、日本語教師のほか、小学校教師、行政書士、社労士、公務員、高校生、主婦など様々なジャンルから、多いときは16人が参加してくれています。外国人労働者がいる職場や、外国籍の子の教育現場で活用され、普及に協力してくれる仲間が増えてきました。

 コミュニケーションは互いに伝えたい内容が相手に届いてこそ、初めて成立します。この法則を使って話すだけで、外国人の生活の質が良くなり、結果的にお互いにとって安心できる環境につながるのです。これからますます外国人と日本人が一緒に暮らしていく社会が広がっていきます。その中で私たちができることの一つが、この「やさしい日本語」なのです。

(ニュース和歌山/2021年1月16日更新)