忍びの極意で開く未来

 忍術で思いつくのに「変装」があります。人の往来を知るために地面に耳を付けている場面を、映画でご覧になったこともあるでしょう。それら忍術の根拠になっているのが「正忍記」です。

 「正忍記」は和歌山生まれの紀州藩士で、軍学者の名取三十郎が記した書物ですが、忍術書の筆者で実在が証明できる人物は極めて少なく、その身分からも非常に格式ある書物として、日本三大忍術伝書の一つに数えられています。忍者のイメージの中で間違ったものもあります。十字手裏剣の早打ち、飛んだり跳ねたりして敵と戦うことはその代表です。

 実際の忍術では、敵と戦うよりも相手に戦う気持ちを起こさせず、戦ったとしても負かした相手に負けを自覚させない事を得意とし、忍務を遂行するためには、常に安定した精神でコミュニケーションをとり、情報を優位に取得する事が肝要とされています。

 忍者は情報収集の達人であり、忍術の極意は「争わずして相手に勝つ」と言えましょう。現代社会の極意と共通するかもしれません。

 和歌山発のこの素晴らしい知恵を、日本全国のみならず世界へ広め、和歌山の活性化につながればと考えております。そのために海外向けには、名取家墓石の発見者である英国人研究家アントニー・クミンズ氏と連携し、関連情報をネットで発信しています。

 国内では、2014年に結成した「正忍記を読む会」で、月に一度の勉強会を開催し、紀州忍術を深く理解すると共に啓蒙活動に取り組んでおります。市や和歌山城のおもてなし忍者ともイベント協力等で連携し、わかやま歴史館には関連資料も常設展示して頂きました。

 今年は中止しましたが、毎年恵運寺で開いている2月22日の忍者の日イベントを今後も継続し、将来的には小学生向けの副読本の製作や、小学校での紀州忍術体験イベントなどを通じ、子供たちに正忍記を知ってもらい、和歌山の歴史に興味を持ってもらうことが明るい和歌山の未来につながる事と考えています。紀州忍術で和歌山を元気に!

(ニュース和歌山/2021年2月27日更新)