新型コロナウイルス感染症により、観光客が大幅に減少しています。海外との行き来がほとんどできなくなったため、訪日外国人は皆無になってしまいました。以前のように観光で世界を行き来するようになるには、少し時間がかかるでしょう。そのような中で注目されているのが、「マイクロツーリズム」と呼ばれるものです。自宅から1~2時間程度の距離で旅行することと言われています。

 先日、和歌山市と和歌山大学紀伊半島価値共創基幹Kii─Plusは共創研究の成果として、「─ご近所観光旅ガイド─ちかばめぐり」を配布し始めました。これは和歌山市圏域でもマイクロツーリズム(ご近所観光)を進めるために、手引書として製作したものです。

 ご近所観光に「調べる」「出かける」「発信する」の3つの楽しみを位置づけ、その楽しみ方を提案・解説したものです。既存のガイドブックのように具体的なスポットが書かれているのではなく、旅の行き先やストーリーを皆さんに創(つく)っていただく、その「創る方法」が載っているので、あえて手引書と位置づけました。

 自宅周辺の魅力は、知っていそうで意外と知らないことも多いです。いつもクルマで通る道でバスを使うと、車内から知らないお店や風景に出合ったりします。自宅周辺をぶらぶらすると、知らない道や路地を見つけたりすることもあります。いつも気になっているけど入ったことがなかったお店に入れば、新しい出会いもあるでしょう。

 ご近所観光による経済波及効果も大切ですが、それと同じぐらい大切なことは、住んでいる人自身が「いいところに住んでいるなあ」「住んでいる地域(地区)はおもしろい」と再認識することです。この「ご近所の魅力を再発見」する行為を積み重ねていけば、内発的に街への愛着や理解が深まっていくでしょう。外から強制される愛着は、なかなか根付かないものです。

 残念ながら、今年の大型連休もステイホーム。「ちかばめぐり」では「観光地を調べる楽しさ」を提案しています。コロナが少し落ち着いて、また外出が可能になったときのために、皆さんのご近所を調べてみてはいかがでしょうか。きっと新しい発見が、皆さんを待っているでしょう。

和歌山大学准教授 西川 一弘(第2土曜担当)

(ニュース和歌山/2021年5月8日更新)