皆さんは「社会教育主事」という仕事をご存じでしょうか? 教育には、学校教育と社会教育があります。学校教育はなんとなくイメージがつきますが、社会教育という領域もあるのです。学校教育以外の教育を指し、主な社会教育施設としては公民館や図書館、博物館などがあります。
この社会教育の専門的職員として、図書館には司書、博物館には学芸員がいます。この2つは、なじみがあるのでご存じだと思いますが、社会教育事業や公民館での取り組みを進めるもう1つの専門職として、「社会教育主事」があります。ちょうど7月下旬から8月中旬にかけて、和歌山大学で社会教育主事の養成講習を実施しており、私も運営・授業・演習担当としてかかわっております。
「社会教育主事」は教育委員会で発令されないと名乗ることができなかったのですが、昨年制度が変わり、講習を受けるだけで「社会教育士」の称号を名乗れるようになりました。まちやくらしの中には、つながりの希薄化、子育てや介護が生む孤立、災害への備え、若者支援など、様々な地域課題があります。この解決に向けて地域のキーパーソンや資源を結び、コーディネートしながら、解決に向けた「学び」や「学びを通じた実践の支援」をプロデュースするのが、社会教育士(社会教育主事も)の役割です。ひとことで表すならば、地域コミュニティの活性化を目指し、「学びを通じた人づくり・つながりづくり・地域づくり」を行う役割でしょうか。
近年、社会教育主事の配置や養成予算の減少、社会教育を専門とする教員・授業科目の減少があり、文部科学省からも「社会教育」を冠とした部局がなくなりました。一方で地域課題は複雑化し、多様な組織や人をつないで解決を目指すことが重要です。また、子どもの育ちも学校教育だけではなく、地域での学びや学習機会、利害関係のない大人との出会いがバランスよく展開することも求められています。これらに対応する専門的人材としての「社会教育士(社会教育主事)」のニーズはむしろ高まっていくでしょう。
私も和歌山県内のいたるところで社会教育士・社会教育主事が活躍していく環境づくりに、少しでも貢献したいと思います。
和歌山大学准教授 西川 一弘(第2土曜担当)
(ニュース和歌山/2021年8月14日更新)