移住希望者に向けて2018年4月に始まった就農・就労プログラム「わかやま しごと・暮らし体験」をご存知ですか。県移住定住推進課が主催している企画です。移住PRサイト「わかやまLIFE」内での情報発信が中心のため、地元の人はあまり知らないかもしれません。
このプログラム、なかなか画期的なんです。利用者は県内全域140社以上から気になる地域の仕事を選び、1泊2日〜最大5泊6日で「しごと」と「暮らし」を体験できます。受け入れる側の顔ぶれもとても豊かです。紀美野町の山の上にある評判のパン店、私も革財布を愛用している田辺市の若手革作家、生マグロ水揚げ日本一を誇る那智勝浦町の水産会社(写真)など。紀北から紀南まで、海から山まで、様々な会社や店が名を連ねます。
興味深い点は、利用者と受け入れ企業間のコミュニケーションを大切にしていることです。期間中はなるべく対話の時間をつくり、現在の仕事に就いたいきさつや、その地域に住んだ経緯などを、移住希望者に伝えられるよう、事前に各社で準備しています。
単なる労働で終わらない貴重な体験ができるとあり、利用者は年々増加。これまで年間約60人が活用していましたが、新型コロナ禍で移住への関心が高まったことも相まって、今年度は開始4ヵ月で、すでに85人と、過去の年間利用者数を超える申し込みがありました。
受け入れている私の知人たちは「例えば、『持続可能な漁業を守るため、代々続く家業を継いだんです』と説明する。それが和歌山のことを深く考え、自分の仕事や地域に誇りを持つ機会になりました」と話していました。
知れば知るほど、移住希望者だけでなく、受け入れる県内事業者さんにも届けたい情報です。「わかやま しごと・暮らし体験」をきっかけに、素敵な移住者が増えるといいですね。
フリー編集者 前田有佳利(第3土曜担当)
(ニュース和歌山/2021年9月18日更新)