新型コロナウイルスの変異種、オミクロン株の増加による巣ごもりの中、鍋料理で家飲みを楽しんでいる方も多いと思われます。今回は、お鍋に欠かせない白菜や大根が主要農産品の一つとなっている和歌山市の農業を数字から見てみます。
和歌山市で農業に従事する人の全労働人口に対する割合は和歌山県内30市町村で28位と小さく、1位のみなべ町の約20分の1ですが、総農家数は県内2位で、みなべ町の2・5倍あります。農業産出額は、2019年が60億円で県内6位と、1位の紀の川市と比べ約3分の1。一方、米は19億円で、2位の紀の川市の約2倍です。野菜は18年が26億円で、29億円だった印南町に抜かれましたが、翌年は27億円で1位に。産出額は印南町の1・5倍ありますが、耕地面積や農業就業者数が約3倍あり、面積や就業者数当たりの算出額は小さくなっています。
理由は栽培作物の違いにあります。1㌔当たりの市場価格は、19年だと印南町のさやいんげんが2000~3000円、トマトが650円前後に対し、和歌山市の白菜、キャベツ、大根が150~200円程度となっています
17年版の和歌山市農業振興基本計画で、5年後の将来像を「みんなで支え、次世代に繋(つな)ぐ、和歌山市農業」と制定。「豊かな産地の育成」を目指し、ブランド創出に向けた取り組みの中で、農産物の高付加価値化と生産単価の高い薬草に注目し、「薬草の町づくり」をうたっています。
農業を次世代につなぐには、中国やインドなどの超巨大市場をターゲットに、希少な高付加価値の産物を生産することも選択肢だと思います。そのためには、野菜、薬草単独のブランド化でなく、和歌山市ならではの四季折々の新鮮食材を生かした、健康で安心・安全な日本食文化のブランド化を推進し、世界に発信することもひとつの方法ではないでしょうか。
和歌山社会経済研究所研究委員 中西 望(第4土曜担当)
(ニュース和歌山/2022年1月22日更新)