私にはとても好きな光景があります。海南市から和歌山市へ国道42号を北に向かい、和歌浦、高松、堀止を通り、日赤和歌山病院前を過ぎると、正面に和歌山城が見えてきます。そびえ立つ和歌山のシンボルに、いつも見ほれてしまいます。
数年前、初日の出を拝むため、天守閣に登った時は、肩がぶつかり合うほどの人出でした。雲に隠れていたお日様が顔を見せてくれた時、沸き起こった大歓声の一体感は忘れられない思い出です。
和歌山城は市の中心部に位置する標高48・9㍍の虎伏山山頂に建造されました。紀州徳川家の居城としての歴史があります。
日ごろは遠くから眺めているお城を先日、久々に一人で訪れてみました。雨の平日だったこともあり、城内を散策する人はまばらで、貸切状態で楽しめました。ひときわ気になったのが石垣です。紀州特産の青石が多く使われています。足が滑らないか、慎重に石の上を歩きました。
そんな中、県外からであろう団体客に御橋廊下東側の広場で遭遇し、西の丸庭園、通称・紅葉渓庭園に向かう道を尋ねられました。御橋廊下を渡ればたどり着けますが、つい先ほど私自身が濡れた傘と靴を持って渡るのが困難だったため、橋の途中で引き返す提案をしました。昔ならば城主やお付きの者だけしか渡れなかった橋、ぜひ歩いて、格子窓から見える天守閣の眺めを見てほしかったからです。
また、紅葉渓庭園の見所を知ってもらいたいと、庭園内の茶室でお抹茶と和菓子を味わい、一服できることは伝えたものの、他はしどろもどろになってしまいました。和歌山県民としてはもっと上手にお城を案内できるようになりたいと思いました。
そんな私が未体験で気になっている楽しみ方が2つあります。一つは「石垣散策マップ」を片手に、石垣の積み方にどんな違いがあるか確認しながら歩くこと。もう一つは、水上から眺める和歌山城です。お堀をのんびりと川舟で、船頭による案内ガイドに耳を傾け、一の橋から御橋廊下付近まで行く〝クルーズ〟です。
このほかにも、まだまだ知らない未体験の魅力が、お城にはありそうです。遠くから眺めているだけではもったいないですよね。
黒江コンシェルジュ 瀬戸山江理(毎月第2土曜担当)
(ニュース和歌山/2022年11月12日更新)