子どものころからラーメンを「中華そば」って呼んでいて、昔は「和歌山ラーメン」なんて呼び名はありませんでした。お店で「中華そば」が出てくるまでについつい手が伸びる早なれずしも普通に目にしていて、テーブルにあること、食べたい時に食べられることは、私にとっては当たり前でした。

 でも6年前、その光景に驚く人がいました。東京から来たお客様を観光案内した時、たまたま立ち寄った中華そば屋さんで、カウンターに積まれている早なれずしや巻きずし、ゆでたまごを何も言わずに私が手に取り、開け始めると驚いていました。そして帰り際に自己申告で食べた数を伝えるのは、「東京ではありえないシステムだ」と教えられました。

 お客様の良心によって成り立っていることへの理解ができたとき、このシステムは和歌山独特なんだととても誇らしく思いました。そして当たり前のように感じている中に特徴が隠れていると気付くきっかけになりました。

 そんな自己申告制を、私が働く古民家カフェ、黒江ぬりもの館でも取り入れていて、冬になると各席にみかんを置いています。食べたいタイミングで好きなだけ食べてもらえるように。県外から訪れてくれるお客様にはこれをきっかけに、中華そば店では会計時に自分で伝えるシステムがあることを紹介し、加えて海南市はみかん、お菓子発祥の地だと説明しています。

 黒江ぬりもの館は、コミュニケーションを大切にしています。スタッフとお客様はもちろん、お客様同士が出会ったり、話したりする、そのきっかけづくりのためです。赤ちゃん連れのご夫婦が隣の席の家族連れと仲良くなり、心温まる光景を目にすることもあります。八角形のテーブルが店の真ん中にあって、不思議と常連さんたちは好んでその席に座ります。スタッフと話しやすい位置にあること、また相席しやすい席だからでしょうか。

 つい先日はなんと、朝日放送のテレビ番組「相席食堂」のロケに来られました! 元国会議員でタレント、政治コメンテーターとして活躍する金子恵美さんを囲んで、私たちスタッフや常連さんたちが話に花を咲かせたことは、この席ならではの必然なのかなと感じています。

黒江コンシェルジュ 瀬戸山江理(毎月第2土曜担当)

(ニュース和歌山/2022年12月10日更新)