人口減少に伴い、大量生産・大量消費社会からの転換と、デジタル化・脱炭素社会への切り替えが模索される現代。歴史的に見ても、時代が新しく進むときは、新しい学びの形が考えられてきました。時代の変わり目に立ち向かい、自ら価値やビジネス(事業・商品)を作り、社会に貢献できる人物が求められています。そのため官民問わず、新たな人材育成のあり方を探求しています。

 経済産業省は昨年、「未来人材ビジョン」を策定。国際比較すると、日本は学ぶ機会が少なく、組織にいる人の同質性が高く閉鎖的なので、変化に対応するための育成と雇用への転換を訴えています。政府も「リスキリング(学び直し)」支援を表明しました。

 全国的に見ると、民間有志により「ソーシャル系大学」が設立されている地域もあります。「生涯学習」の現代版と言えるもので、各分野に詳しい地域内外の人が先生になります。シブヤ大学(東京)、尾道自由大学(広島)など約80ヵ所あります。また、「アーバンデザインセンター」という未来創造型まちづくりのための知の拠点が、京都府宇治市や愛媛県松山市など全国約20ヵ所にあります。

 和歌山は諸都市に比べ、社会人がスキルアップしやすい総合大学や教育機関、あるいは市民、事業者による学びやディスカッションの場は多くありません。ですが、このコラムで以前取り上げた「ものづくり文化祭」や、感性を磨く「紀南アートウィーク」のほか、海南市を中心に開かれる「みらいワクワク塾」や、県主催の「わかやま塾」があります。

 昨年10月には、「もういちど7歳の目で世界を…」をテーマにした大人の社会塾「紀州かつらぎ熱中小学校」がかつらぎ町に開校。全国で活躍する経営者、教授らが授業を行い、今年は和歌山市内にも開校するそうです。

 人材の集まりが「組織」や「地域・地方都市」です。そのため、「人材」との言葉を「組織」や「地域・地方都市」に置き換えることもできます。前例がない時代、地域には様々な経験を積んだ人を受け入れる懐の深さが必要です。和歌山が勉強し続ける地域、組織であり、多種多様なスキルを蓄えた人たちがいる、知と交流の場所になればと思います。

WEBメディア「ワカヤマデイズ」運営 武田 健太(毎月第3土曜を担当)

(ニュース和歌山/2023年1月21日更新)