ある森の奥深いジャングルの中に、サルばかり住んでいる、大きな6階建てのマンションがありました。1階にはリスザルが、2階には日本ザルが、3階にはチンパンジーが、4階にはテングザルが、5階にはオランウータンが、そして一番最上階の6階にはゴリラが、みんな家族や仲間達と楽しく暮らしていました。

 リスザルのポッキーは、やんちゃな子供のサルで、いたずらをしてはしかられて、泣いてばかりでしたが、みんなの人気者で、いつもいろんな階に遊びに行っていました。でもゴリラのいる6階には、ちょっとこわくて、まだ行った事がなかったのです。

 ポッキーには、ミルキーという妹ザルがいます。ある日突然、ミルキーが高熱を出して、苦しんでいました。オランウータンのディック医師に見てもらいましたが、病気の原因がわからず、多分もう助からないだろうと言われてしまいました。ポッキーも、ポッキーの家族も、リスザルの仲間達も、とても悲しみ、神様に祈るばかりでした。

 ポッキーは、何でも知っているテングザルのジャック博士に、妹のミルキーが助かる方法はないか、と相談してみました。ジャック博士は、一番強い力を持つゴリラの涙は、なんにでもきく魔法の薬だと聞いた事がある、と教えてくれました。

 「そうか、ゴリラから涙をもらって飲ませたら、ミルキーは助かるかもしれない」。そう思ったら、ポッキーは、今までこわくて行けなかった6階に行く決心をしました。

 でもやっぱり、行こうとするとドキドキして、なかなか階段が上れません。すると、仲良しの日本ザルのマモルと、チンパンジーのローリーが一緒に付いて来てくれました。

 6階に着くと、優しそうなゴリラのお母さんが出て来ました。ポッキー達は少しほっとして、ミルキーの病気の話をしました。ゴリラのお母さんはとてもミルキーを気の毒がり、ゴリラの中で一番強いボスの所に案内してくれました。

 ポッキーはこわくて、ボスに会っただけで、泣いてしまいました。ボスは、「泣かなくてもいいんだよ」とお母さんゴリラの様に優しく話しかけてくれました。「でもね、ゴリラは強いから、めったに泣く事はないし、涙も簡単には出ないんだよ」と教えてくれました。

 ポッキーは、ミルキーが助けられないと思ったら、くやしくて、悲しくて、又泣いてしまい、涙が止まりませんでした。仲良しのマモルとローリーも、ポッキーにつられて、えんえん泣き出してしまいました。

 その泣き声はマンション中にひびき、1階でも、2階でも、3階でも、4階でも、5階でも、泣き声が聞こえ出しました。

 その声におどろいた6階のゴリラ達は、ボスの所に集まりました。そして、ミルキーを何とか助けてあげようと言い出しました。その様子を見たゴリラのボスはとても感動して、目から涙があふれ出しました。その涙をゴリラのお母さんが小さなびんに入れて、ポッキーに渡してくれました。

 すぐに、ミルキーの所へ行き、ゴリラの涙を飲ませると、ミルキーは、うその様に元気になったのです。ポッキーも、ポッキーの家族も、リスザル達も大喜びです。1階が喜ぶと、すぐに2階でも喜び、3階でも、4階でも、5階でも、そして6階でも、大喜びしている声が聞こえ出しました。

 それから、ポッキーは時々、6階のゴリラの所にも遊びに行く様になり、みんなとますます仲良くなって、楽しく暮らしました。

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おはなしボランティアきいちご代表、北裏祐子審査員…モンキーマンションは「すばらしい世界」そのもの、悲しみも喜びもみんなで感じ合うことができるなんて! そしてみんなの思いやりが、不可能を可能にしていくストーリーも惹(ひ)かれました。読み終わった後、心が温かくなる作品です。

(ニュース和歌山2016年2月20日号掲載)