自分で組み立てる車のプラモデルで、電池とモーターで走る「ミニ四駆」。このおもちゃを走らせるコースが、海南市船尾のうるわし館(紀州漆器伝統産業会館)にあります。漆器を売ったり、製作体験ができる施設に、なぜミニ四駆のコースがあるんでしょうか…?

 漆の木から採った樹液を塗って作る漆器。海南市の黒江地区は日本三大産地の一つです。昔は木を削って作った土台に漆を塗っていましたが、昭和30年代後半からはプラスチックに、漆以外の塗料を使って塗る職人さんが増えています。

 「紀州塗りを子どもたちに知ってもらいたい」と考えたのが、紀州漆器協同組合青年部の島圭佑さん(27)。目を付けたのは、男の子に人気のミニ四駆でした。毎年11月にある紀州漆器まつりの中で、3年前、ミニ四駆の大会「紀州漆器カップ」を始めました。1年目は、島さんが伝統の技を生かし赤と黒に塗ったミニ四駆のボディを1〜3位に入った人に贈りました。

 昨年、賞品となるボディを担当したのは、町田智哉さん(30)。まるで本物の木のような模様を描きました。「いつもゴミ箱やティッシュケースに木目を塗っているんですよ。『3位までに入れなかったら、お金を払うので作って』と頼まれた時はうれしかったですね」

 参加者の中には、「学校の宿題にするため、漆器について教えてください」と言ってきた子もいたそう。島さんは「食器やお盆だけじゃなく、最近は照明器具やメガネの柄などに塗る職人さんも。新しいことにどんどん挑戦している紀州漆器に興味を持つ子が増えてほしい」と願っています。

写真上=若い漆器職人の島さん(左)と町田さん
同下=昨年の大会、賞品となったミニ四駆のボディ。本物の木に見える

 

◇紀州漆器カップ
 11月4日(日)。今年の賞品となるボディのデザインは「まだ秘密」だそう。参加者全員に紀州塗りのおわんストラップをプレゼント。

◇ミニ四駆練習会
 毎月第3日曜午前10時〜午後4時。次回は9月16日(日)。
〈参加費〉大会、練習会とも中学生まで無料、高校生以上500円
〈問い合わせ〉うるわし館073・482・0322

(ニュース和歌山/2018年9月12日更新)