2020年、新型コロナウイルスの感染拡大で、子どもたちの暮らしはかつてないほど大きく変化しました。「新しい生活様式」が求められる中、来年、和歌山では『紀の国わかやま総文2021(全国高等学校総合文化祭)』の開催を控えています。また、少子高齢化の大きな波を受け、和歌山の教育も大きな転換の時期を迎えています。時代を、地域社会をより豊かにする教育の形とはいかなるものか。宮﨑泉教育長に髙垣善信ニュース和歌山主筆が聞きました。
写真=「来年は漢字一文字で言うと“編”の年」と語る宮﨑教育長
オンラインの活用推進〜ハイブリッド型の学びを
髙垣主筆(以下、髙垣) 新型コロナウイルスの感染拡大は、子どもたちの学校生活を直撃しました。「新しい生活様式」が求められる中、これからの学校生活をどのようにつくっていきますか? また、学力面やメンタル面などへの影響も懸念されます。このあたりの対応はいかがでしょうか。
宮﨑教育長(以下、宮﨑) 学校再開後は、児童生徒の頑張りや、保護者の方々のご尽力、地域の方々のご支援などのおかげで、学校生活を軌道に乗せることができ、皆様に感謝申し上げます。学校再開以来、学習計画の立て直しや行事の重点化、補充学習や家庭学習の充実など、あらゆる手段を用いて子どもたちの学びの保障に努めています。また、スクールカウンセラー等の配置や、電話やSNS(LINE)を活用した相談窓口の設置など、不安を感じている児童生徒の相談体制を整え、心の不調の訴えにも対応しています。
髙垣 中でも、オンラインを活用した授業が取り入れられるなど、話題となりました。ICT環境の整備が課題となっていますが、従来の取り組みに加え、今後どういったところに力点をおいて整備と取り組みを進めていきますか?
宮﨑 国のGIGAスクール構想(※)により、小・中学校に1人1台端末の整備が進んでいますが、本県では県立高校にも1人1台端末が使える環境を整備しました。この環境を、新型コロナウイルス感染症の対策としてだけでなく、普段の授業から活用していきたいと考えています。今後は、対面とオンラインのそれぞれの長所を組み合わせた「ハイブリッド型」の学びが実現できるよう、授業コンテンツ作りなどに現在取り組んでいます。
※GIGAスクール構想…1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークの一体的整備
県立高校再編へ一歩〜少子化時代の責任
髙垣 さて、今夏のきのくに教育審議会の答申に基づいて、県立高校の再編整備実施プログラムを作っていくとのことですが、その大きな方向性、重点的な取り組みを教えて下さい。
宮﨑 きのくに教育審議会では、時宜を捉え、的を射たご提言を数多くいただきました。地域の子どもたちを、その地域で育てることが大切で、学校は、地域の核となって地域社会の担い手をつくるという、たいへん重要な責任を果たさなければいけないと思っています。中学校卒業生徒数は、今後15年で平成元年の3分の1にまで減少する見込みですが、これまでの学校を発展的に融合させる中で、子どもたちにとって本当に必要な高校像をつくっていきたいという思いで取り組んでいきます。
写真=答申内容を説明し、意見を聞くため、県内5会場で地方別懇談会を開催(10月12日、和歌山県民文化会館)
複数高校の発展的融合
髙垣 「全日制高校が29校から20校に」というのが大きく話題になりましたが、実際に再編整備となると、大変デリケートな話です。この点に臨まれる対応と基本的なお考えをお教え願えますか。
宮﨑 今ある29校のうち9校が無くなって20校になるということではなく、地域内の複数の高校が発展的に融合し、新たな学校になるということです。言い換えれば、29校のなかで全く無くなってしまう高校は、1校もないということであり、29校すべてが新しい学校に生まれ変わるということでもあります。
年明けも懇談会を継続
髙垣 今後はどういったプロセスで進むのでしょうか。
宮﨑 答申内容についての地方別懇談会を県内5会場で、さらにご要望に応じた個別懇談会を20か所以上で開催してきました。その中で、これからの高校教育や高校の在り方への注目や期待が大きくなっていると感じました。年明けには、教育委員会としての再編整備の考え方を整理して、各県立高校を会場にした懇談会で説明し、合意形成に向け丁寧に取り組んでいこうと考えています。
紀の国わかやま総文2021〜全国の高校生一堂に
髙垣 さて、来年は紀の国わかやま総文2021が開かれます。準備や周知が始まっていますが、今後の予定を教えて下さい。また、どういった大会になることを期待していますか?
宮﨑 去る10月、紀の国わかやま総文2021のプレ大会の総合開会式とパレードを行いました。手前味噌ですがとても感動しました。今後も、生徒企画委員会が中心となって、開催前のイベントを定期的に行うなど、大会の機運を盛り上げてくれます。自ら進んでこの仕事に携わっている生徒企画委員会の生徒たちは、活躍の舞台を得て、見違えるほど成長しています。来年7月下旬の開幕時には、新型コロナが落ち着いていることを願いつつ、他県からの生徒たちを喜んで迎え入れたいと思います。絶対成功させたいし、そうできると確信しています。
写真=10月25日、和歌山市のけやき大通りで行われたパレードでは、生徒企画委員会の生徒たちが横断幕を掲げ、「紀の国わかやま総文2021」をPRした
時代にふさわしいシステムの創造
髙垣 ありがとうございました。最後に来年に向けた抱負と展望を、漢字一文字で表現して頂けますか。また、その思う所をお聞かせ下さい。
宮﨑 「編」ですね。「編」には「順序だてて組み立てる」「書物にまとめる」などの意味があります。「保護者や地域など、子どもたちを支える多くの方々の力を結集する」、「生徒企画委員会を含め、紀の国わかやま総文2021に集う生徒たちが、活動の輝かしい成果を全国高等学校総合文化祭の歴史の1ページに刻む」、「今後の高校の在り方を考え、これからの時代にふさわしい内容とシステムを備えた県立高等学校を創造する」──。「編」にそういう思いを込めて、また、そういう1年になるようにしていきたいと思っています。
(ニュース和歌山/2020年12月26日更新)