北裏祐子賞 「いいところはひとりひとりに」高松小4年 林永翔
ある町はずれの農場に一羽のにわとりがいました。名前はコッコと言います。かい主さんが付けてくれた名前です。
ある日、農場に一羽のカラスが現れました。そのカラスはこの辺をパトロールするかのように毎日飛び回っています。「おはようコッコ。今日は隣町で大きなお祭りがあるみたいだよ。たくさんの人が忙しそうに用意していたからね」。その言葉を聞いてコッコはとっても見に行きたくなりました。「ぼくが見てきて、様子を教えてあげるから君はおとなしくまっていろよ。どうせ君は飛べないんだから」
コッコはうらやましさと悔しさで悲しくてたまりません。次の日、いくら待ってもカラスは様子を教えには来てくれませんでした。コッコは待っているだけの自分がいやで、自分も飛べるようになりたいと思いました。
さあ、もう特訓のはじまりです。まず、全速力で走り抜け、羽を力いっぱい羽ばたかせてみました。けれどもちっとも飛べません。次に、高いへいから思いっきりジャンプして、大きく羽を羽ばたかせてみました。けれどもストンと落ちるだけ。コッコは飛べる気がしなくなってきました。
するとそこへ、昨日のカラスが友達のウグイスを連れてやってきました。「飛ぶ練習をしているのかい。君は、にわとりだからいくらがんばっても無理だよ」「ホホホ、ホーホケキョ」。なんてすてきな、なき声なんでしょう。ぼくのなき声もそんなだったらいいのに。カラスはウグイスと笑いながら飛び立って行きました。
コッコがとぼとぼ小屋に帰る途中、牛に出会いました。「元気がないね。どうしたんだい」。コッコは今まで起こったことを全て話しました。真剣に聞いていた牛は、「話はよく分かったよ。でも、飛べなくても君にはいいところがあるよ」「ぼくにいいところなんかないよ」「そう思うなら、朝7時ぴったりに小屋の外に出てみなよ」。コッコはその意味があまり分からないまま、小屋に帰って行きました。
次の日の朝7時、コッコは小屋の外に出て大きく息をすい込んでむねをふくらまし、力いっぱいなきました。「コケコッコー」。すると、農場の動物たちが次々と目を覚まし始めました。農場のおじさんも出てきました。「おはようコッコ。今日も起こしてくれてありがとう。君の名前は毎朝、コケコッコーとないて起こしてくれるからコッコなんだよ」
コッコは初めて気づきました。今までなくとすぐに小屋にもどっていたので、みんなが自分のなき声をたよりに起きてきていることを知らなかったのです。コッコは牛が言っていた意味が分かりました。
ぼくのなき声ってすばらしいんだ。コッコは元気がわいてきました。そして、いちもくさんに牛のところへかけていきました。「牛さんありがとう。ぼくのいいところを見つけてくれて」。そう言うと、牛はなんだかちょっと照れくさそうでした。
「やあ、おはよう。今日も元気ないい声だったね」。と、どこからともなくカラスが現れました。「実はね」。カラスは話を続けました。「ぼくはずっと君がうらやましかったんだよ。ぼくは飛べるけど、君のようにないてみんなを起こすことができないからね」
コッコが言いました。「ぼくも君がうらやましかったんだよ。ぼくはないてみんなを起こすことが出きるけど、君のように空を自由に飛ぶことはできないからね」
二羽は羽をばたばたさせて笑いました。
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「おはなしボランティアきいちご」代表、北裏祐子審査員…だれにでもステキな所は必ずありますが、そのことに気づくのはとてもむずかしい。自分のいいところ、必要な存在であることに気づいたコッコは幸せですね。成長し広い世界に飛び出していくコッコの姿が目にうかぶようです。
(2017年1月28日更新)