イランから飛行機でネパールにやってきました。ネパールに来た最大の目的は「エベレスト街道トレッキング」です。エベレストベースキャンプを目指し、最大標高5500㍍の山々を1ヵ月間みっちり登山する計画を立てました。昨年4月25日に起こったネパール大地震の影響によるトレッキングルートの被害状況、復興状況は不明でしたが、現地で情報を集め、意を決して出発しました。
序盤のジリ─ルクラ間は地元民の生活道。通常の登山客は飛行機で通り過ぎる場所です。登山客はほとんどおらず、素朴な現地の生活を感じ取れました。しかし、観光向けではないマイナールートであるため、勾配がきつかったり、道が荒れていたり、道が険しい! そして、荷物をポーターに持ってもらえるキリマンジャロ登山とは異なり、エベレスト街道トレッキングは13㌔ほどのザックを自分で背負いながら歩くため、足への負担が大きいのです。
キリマンジャロでは一度も筋肉痛になりませんでしたが、今回は2日目から激しい筋肉痛に襲われました。しかし、歩く速度や休憩のペースを自分で管理できるのは楽です。キリマンジャロではガイドにペースを崩されてしまい、結果的に体調を崩しやすくなってしまいました。
山での生活は日常と大きくかけ離れたものです。ロッジでは、食事を作るためのかまどや暖房のためのストーブの燃料は、ヤクと呼ばれる高山牛のフンや薪を使います。時間も手間もかかりとても不便に思えますが、現地の人にとっては当たり前の生活。ゆったりと流れる時間は心地よく感じます。僕達は、早朝に出発し、昼過ぎには次のロッジに到着します。夜は8時に就寝という小学生のような毎日。標高が上がると水や温水が貴重になり、2週間シャワーを浴びないという初体験もしました。
最も印象に残ったのはカラパタールからゴーキョへ向かう「チョラパス」と呼ばれる登山道です。この登山道は想像よりもかなり険しく、ルートが分かりづらく、雪の積もった山肌は滑落の危険もあり、常に神経を尖らせた1日でした。しかしそこで見た景色は圧巻で、険しく大きな雪山がすぐ目の前にそびえ立つ迫力や、どこまでも続く山々、目がくらむような真っ青な空は息をのむほどでした。
ようやくたどり着いたゴーキョピークからの景色も素晴らしく、何とも言えない色をした湖と、幾重にも連なる山々のパノラマ。寒さも忘れ、そこを離れたくない気持ちになりました。
総歩行距離260㌔、総歩行時間153時間、トータル31日間のとても内容の濃い山登りでした。今後、1ヵ月も山にこもる生活をすることはないでしょう。2週間ぶりのシャワーの気持ちよさ、山に住む人の生活、山で見た絶景、一生忘れることのない思い出になりました。
写真上=チョラパスの絶景 同下=ゴーキョピークにて
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自転車で世界一周の新婚旅行に挑む辻陽平さん、夕佳さんの連載は奇数月の第3土曜号掲載で次回は3月19日号。旅の様子はブログ「フィールドテスト 自転車世界一周」で随時更新中。
(ニュース和歌山2016年1月16日号掲載)