みかん、柿、桃、梅、ブルーベリー、はたまたカボチャににんじん…。和歌山の恵みをたっぷり詰め込んだジャムを生み出す、なぐさファームの本郷仁視さん(55)。2013年8月、紀三井寺近くに工房を構え、素材を引き立てた味わいや、「みかんとにんじん」「柿とシナモン」など自由に組み合わせるユニークな商品が評判を呼んでいます。本郷さんに果物の楽しみ方を聞きました。 (文中敬称略)
義父の甘夏が原点
――ジャム工房を立ち上げたきっかけは。
本郷 夫の父が甘夏の木を5本植えており、それを使ってマーマレードを作り、周りの人に配っていたのが始まりです。甘夏は原点ですね。
――特徴は。
本郷 りんご以外は県産のフルーツを使っています。家は水あめを作る食品会社で、それまではジャムに使っていなかったのですが、商品を作る時に加えてみると、控えめな甘さで素材が引き立ち、色も鮮やかに出せました。みかんの袋を一つひとつむくところから手作業。鍋でじっくりと煮詰めています。品種の選び方や、切り方などの下処理も重要です。
農園とコラボ
――フルーツと野菜のジャムが並びます。
本郷 素材は各地の農園に直接出向いて選んでいます。ラインナップは季節によって変わり、だいたい30種類ほどをそろえます。実家が有田のみかん農家なので、この時期はみかんの商品がたくさん。最初は自分で果物も作りたいと考えていたのですが、色んな農園の果物を組み合わせるのが面白くて。農園さんと一緒にコラボレーションしているという気持ちです。橋本市の洋梨や有田市のマンゴーなど、「これは和歌山では作っていないだろう」と思っていた作物が見つかったときはうれしいです。
素材を組み合わせ
――珍しい味も。
本郷 昨年は枝豆のジャムが人気でした。素材同士を組み合わせたものも好評。例えばイチジクとスモモを合わせると、まったりとしたイチジクの甘さが酸味でしまる。みかんとにんじんは、金時にんじんのシャキシャキした歯ごたえが生きます。実験のように試作を繰り返しています。
――どの商品も様々な楽しみ方ができそうです。
本郷 パンはもちろん、紅茶やヨーグルトに入れたり、ケーキに使ったり、チーズやクラッカーにと色んな楽しみ方ができます。キウイやイチジクは生ハムに合いますよ。
――フルーツと野菜を乾燥させたものもあります。
本郷 昨年、「くだもののお菓子」「野菜のお菓子」と名付けて作り始めました。味付けはせず、酵素を壊さないよう、じっくり低温で乾燥させています。素材そのものの素朴な味がしっかりとしていて、特にお子さんのおやつにおすすめ。色がきれいで、みかんの輪切りは皆さん光に透かしているところをよく見ます。
――店舗と工房は併設です。
本郷 もともと倉庫として使っていた場所を夫と手作りで改装しました。紀三井寺に近く、観光客に立ち寄ってもらえるので、古代の女王、名草戸畔(なぐさとべ)にまつわる本や和歌山の本をたくさん置いています。まだ立ち上げて2年半。もっと果物と友だちになり、仲良くなりたい。和歌山はすばらしい果物がいっぱい。まだ知らないものも使い、あますことなく嫁がせていきたいです。
【なぐさファーム】
和歌山市紀三井寺712
☎090・5090・2025
午前11時〜午後5時。日・祝休み
(ニュース和歌山2016年1月27日号掲載)