毎年1月、熊野と高野地域を70㌔歩く4日間のプログラムを学生たちと行っています。今年は九度山駅から歩き始めました。以前は静かな山のふもとの町でしたが、NHK大河ドラマ「真田丸」で日本中に知られるようになってきました。
私たちは弘法大師空海が1200年前に開創した真言密教の聖地、高野山を目指し、約20㌔の山道を登りました。途中、空海の母が暮らしていた慈尊院を訪れ、柿畑の中の険しい小道を歩きました。農家がせん定した木の枝や落ち葉を燃やしていました。太陽が昇り始め、朝の光が煙に差し込んでいます。まるで雲が私たちをより高い場所へと誘ってくれるかのようでした。
ここは別の世界へと続くスピリチュアルな巡礼の道、町石道。高野山の神聖な空気は、この道を旅した巡礼者がいただけるご褒美でしょうか。
(ニュース和歌山2016年2月10日号掲載)
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オーストラリア出身の写真家、映像ジャーナリスト。2008年に来日し、和歌山大学観光学部の特任助教を務めるかたわら、太地町の捕鯨文化をユネスコの産業遺産に登録するため、文化財の独自研究と調査を進めている。