ニュース和歌山第2・4土曜号で好評連載中の「マエオカテツヤの妖怪大図鑑」。今回は特別編として、和歌山城とその周辺に出没する妖怪3つをご紹介いたします。
其の六 野衾(のぶすま)
怖さ:2 山の妖怪
夜間、空を飛んで来て、道行く人の目や口を覆い、行く手を阻む妖怪。木の実のほか火も食べ、人や動物の生き血を吸うともいう。長い年月を経たコウモリが野衾になるとされるが、江戸時代の妖怪画家、鳥山石燕(とりやませきえん)は「野衾はむささびの事なり」と解説している。夜に目が利くムササビが人の持つ明かり等をめがけて飛来し、人の顔に着地した姿が血を吸う、火を食べるという伝説につながったのだろう。とすれば、かつて和歌山城の敷地内には多くの野衾が棲(す)んでいたことになる。突然、野衾に張り付かれて怖~い思いをした人の体験談が妖怪を生んだ例だろう。
其の七 天狗(てんぐ)
怖さ:3 山の妖怪
深山に住む日本で最も有名な妖怪のひとつ。一般的に山伏姿が多く、赤ら顔で鼻が高い。背に翼があり、自由に飛行する。また神通力を使うので神として崇(あが)められたり、人を魔道に導く魔物とされ恐れられた。和歌山各地には天狗にまつわる話が数多く伝承されている。和歌山城が築かれるはるか昔から虎伏山に棲(す)んでいた天狗と和歌山城主・徳川頼宣公とのどちらが真の主かを言い争う話も残っていて、結局、殿様には勝てず、城の見回りをまかされたという。殿様も天狗に勝負で勝ったとなれば、さぞ鼻が高かったことだろう。
其の八 髙女(たかおんな)
怖さ:4 町の妖怪
嫉妬(しっと)深い醜女(しこめ)がなると言われる妖怪。普段は普通の女性であるが、嫉妬や男性に相手にされないと怒り、正体を現す。下半身を伸ばし2㍍以上にもなって伸び上がり、男女が仲良くしている2階の間を外から覗(のぞ)いて回るという。和歌山には木地師(轆轤(ろくろ)を用いて椀や盆等の木工品を加工、製造する職人)の女房になりすまし、夜な夜な子どもや使用人を食べたという「高女房(たかにょうぼう)」という話が残る。2階にいるのに誰かに覗かれているような気がする時はないだろうか。そんな時は決して窓の方を見ないように…。そう、高女が覗いてるかもしれないからね…。
(ニュース和歌山2016年2月24日号掲載)