和歌浦交差点の旧和歌川漁業協同組合を改装した食堂「WAKAYA 津屋」。昨年11月のオープン以来、かまど炊きの白飯に、和歌浦の干物や刺身、好きな総菜を選べる定食スタイルが話題を呼び、客足が絶えない。調理場をしきる店長の平松利仁さん(38、写真左)と、かまどでの飯炊きを担う森下祐次さん(34)が生み出す定食は、シンプルながら和歌浦の旬と愛情が詰まった逸品だ。 (文中敬称略)

 

漁協の建物再生

16030901_tuya──板張りの床や木の格子窓など懐かしい雰囲気のある店です。

平松 ここは1962年に造られた和歌川漁業協同組合の建物でした。海苔(のり)の集荷や品評をするのに使われ、海苔組合と呼ばれて地元で親しまれていました。建物の歴史をもとに、和歌浦の干物や海苔、かまどのご飯を定食で出す店のコンセプトを考えました。

森下 水道の配管と電気工事以外は自分たちの手でリノベーションしました。床は以前の板の間をそのまま生かし、壁やカウンターは廃材で造っています。テーブルといす、食器は、去年解体された加太の吾妻屋旅館からいただいたものなどを活用しているんですよ。

3杯いける白飯

──干物や唐揚げ、だし巻き卵など多彩なおかずがメニューに並びます。

平松 人気は和歌浦の干物店が作った灰干しのさんまやサバです。焼き立てはじゅわじゅわーっとして身がふっくら。大根おろしに湯浅しょう油を垂らすと白飯によく合います。刺身もおすすめ。雑賀崎や下津、有田の漁港で揚がったばかりの、新鮮な魚をさばきます。

森下 メニュー内の「たえちゃんのおばんざい」も人気です。調理経験の長い女性スタッフが、かっぽう着を着て作る総菜。ふろふき大根や肉じゃが、高野豆腐の卵とじ、全てだしから作る昔懐かしい家庭の味です。

──ちゅう房には昔ながらの立派なかまどがあります。おこげの香ばしい匂いが漂ってきますね。

森下 まきの太さを使い分け、火加減を微調整しながらご飯を炊き上げます。水の温度や気温、蒸らす時間で仕上がりが変わるので、つきっきりです。お客様は「懐かしい」とか「これで炊いてるん!」と驚いて見ていかれますね。

平松 ここの白飯を食べると、家の炊飯器のご飯は食べられなくなる。甘くて一粒一粒がしっかり立っています。基本メニューのご飯セットは3杯までおかわり自由。セットには豚汁、湯浅しょう油で煮込んだ自家製の昆布のつくだ煮、旬の野菜の浅漬けと豚肉の肉みそが付きます。テーブルに地元の味付け海苔も置いていて、ご飯の友がたくさん。お客様は皆、おかわりしてくれます。

シンプルがごちそう

──今後はどんな店に。

森下 オープン以来、小さいお子様から年配の方まで色んな世代のお客様が来てくれます。おじいちゃんやおばあちゃんとお孫さんが一緒に食卓を囲み、笑顔が自然とこぼれるような、あったかい店にしていきたいです。

平松 和歌浦で昔から親しまれていた良い建物の風合いが残っていて、そこでかまどの飯と和歌浦の魚が味わえる。昔のように、シンプルだけれど、それが最高のごちそうだと思ってもらえる店にしたいです。お客様が帰る時にちゅう房の前を通っていくのですが、その時、笑顔になっていると心底うれしくなる。これからも、その笑顔をつくれる店にし続けたいです。

【津屋】
和歌山市和歌浦東2-6-2
午前11時〜午後2時半、午後5時半〜10時。月曜昼夜・火曜夜定休
☎ 073・444・0525

(ニュース和歌山2016年3月9日号掲載)